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Posted by TI-DA at

2011年04月01日

放射性廃棄物の行方

引き続きNAM環境系MLへの投稿過去ログから。

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『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』 
広瀬隆 藤田裕幸著(東京書籍 2000年)


第2章 核燃料サイクルと放射性廃棄物の行方


43 廃棄物の発生量と保管能力は

1) 日本がフランスとイギリスに再処理を委託したため、そこで取り出された高レベル廃棄物は、全て日本に返還される契約になっている。その第1弾が、1995年4月26日にフランスから返還され、以来、六ヶ所村に高レベル廃棄物がガラス固化体として次々に運ばれてきた。2000年2月までの返還量は、固化体272本にも達した。今後十数年間で、三千数百本を六ヶ所村に搬入するとされているが、フランスとイギリスに輸送した使用済み核燃料7100トンから計算し、2015年までに3500本のガラス固化体が全量返還されると仮定すると、毎年220本の割合で貯蔵庫がふくれあがっていく。

2) 100万キロワット級の原発が稼働率80%で運転すると、キャニスターほぼ30本の高レベルが発生するが、これに各地の原発の稼働率(過去の実績)を当てはめて計算すると、国産の高レベルキャニスターに換算して1万7000本分の放射性廃棄物が発生している。

3) しかし、六ヶ所村の第1貯蔵庫は、総量で1440本しか収納できない。フランスとイギリスに使用済み核燃料を送り、あるいは六ヶ所村で再処理しようがしまいが、プルサーマル計画でプルトニウムを利用しようがしまいが、キャニスター1万5000本あまりに相当する大部分の高レベルは日本全土の原発に氾濫する。

4) その量は今後さらに増加し、原発の運転寿命を30年と設定すれば、東海第一原発(98年廃炉)を含めた原発52基の分だけで、2027年には国産キャニスターに換算して4万本分に達する見込みである。(フランス・イギリスのキャニスターは、国産のほぼ2倍の放射能濃度なので、本数は半分になるが、危険度が高い。)

5) そのため六ヶ所村では、第2貯蔵庫が建設されているが、これを合わせても2880本しか収納できない。2005年に第1貯蔵庫が、続いて2007年には第2貯蔵庫も満杯になる予定である。


44 青森県に持ち込まれる理由

 その高レベル廃棄物が海外から六ヶ所村に入る正当な理由がないところに問題がある。なぜなら、国策では、青森県は高レベル廃棄物の「最終処分場」ではない。青森県議会も最終処分場にすることを拒否決議しているからである。84年4月に発表された計画では、最終処分場は北海道幌延町とされていたが、北海道がそれを拒否し、日本全土に受け入れ場所がどこにもないがゆえに、六ヶ所村に運び込まれているのであるに過ぎない。


45 高レベル廃棄物の保管法・処分法とは

 原子力発電をスタートしたとき、世界中で高レベル廃棄物問題は未解決であった。アメリカは直ちに研究に取りかかり、数々の方法を検討したが、、しかし結論は、不可能ばかりであった。

1)ロケットで宇宙へ打ち上げる → 打ち上げに失敗すれば放射能が全世界を包む。

2)無人島の専用ビルに収める、または3)深海に投棄する → これはその海域に住む人の危険性を無視した身勝手な話で、当然、南太平洋諸国からの猛反対を受け、国際条約で全面禁止となっている。

4)南極の氷山に埋める → 氷山と岩床の間には、凍結せずに流動している水の層があり、放射性物質が海中に出てしまうことがわかり、59年の国際条約で禁止された。

5)閉鎖原発と共にコンクリートで固める → その土地は永遠に危険地帯として使えなくなる。

6)中性子をぶつけて核反応をおこし、短い寿命の放射性物質に変える、または7)核融合によって短い寿命の放射性物質に変える → 200種類を超える放射性元素を分類しなくてはならず、商業的に不可能。しかもごく一部の物質しか短い寿命にならないので意味がない。

こうして地中に処分する方法が残った。

8)地下2000メートルの洞窟に高熱の廃棄物溶液を流し込む → 裸で高レベル廃棄物を流し込むほど危険なことはなく、廃棄物が計算通りに分散しなければ、核爆発する可能性がある。

9)深井戸に流し込む → 泥から生成された頁岩に500メートル程度の深い穴を開け、高圧の水を送って裂け目をつくってから水をくみ出し、その後、液体廃棄物に灰とセメントを混合してどろどろの状態で流し込み、岩の間でセメントを層状に固まらせる。ソ連(ロシア)は、低レベル廃棄物をこの方法で大量に処分してきたが、この方法が不安定で危険であることはいうまでもない。

10)地下1万メートルのマントル層に埋める → 人類はまだこの深さまで穴を開ける技術を持たない。

11)廃坑(鉱山か岩塩坑)に埋める → 高レベルの地層処分でもっともおそれられているのは、地下水の汚染であり、鉱山も岩塩坑も複雑に地下水が流れており、可能性がない。

12)地下1000メートル程度の地層に埋める → これがベストなのではなく、他に何も考えつかないからという理由でこの方法が残った。


46 世界の地層処分計画と現状

・ドイツ → 地層処分は現在全くの白紙。そのため、ガラス固化体ではなく、原発からでた使用済み核燃料をそのまま巨大な金属容器に入れて、そのまま地上保存する方法に移行しつつあるが、莫大な容器コストを要するため、遅々として進まない状態にある。
・スウェーデン → 地層調査さえ住民投票によって拒否されている。
・スイス → 住民投票によって拒否。
・カナダ・イギリス → 全く計画が進んでいない。


47 アメリカにおける地層処分困難の現状

 日本で誤って報道されているように、「アメリカでは地層処分が進められている」のではなく、歴代大統領が任期中はこの解決不能の問題に触れないように先送りしてきたのである。現実は、全く見通しが立たないまま、電力会社の使用済み核燃料管理コストが膨張し続け、それを国の財政で補助しながら、かろうじて原子炉の運転を続けている。


48 日本での処理は

 日本では、高レベル廃棄物をガラス固化体として金属キャニスター容器に注入した後、これをオーバーバックと呼ばれる炭素鋼と緩衝材で包んでから、地層に埋めることになっている。

 地中には、縦坑を掘り下げてから、300~1000メートルの深部に横穴を多数掘り進め、そこにキャニスターを運び込んで、最後には、横穴・縦坑とも埋め戻す、という計画である。つまり穴をふさいでしまうので、地中で万一の汚染発生時の、汚染防止対策を全く持たない。

 これまで科学技術庁と動燃(核燃機構)および原子力委員会、原子力安全委員会の高レベル廃棄物関連の専門部会は、「岡山県・人形峠周辺や岐阜県・東濃鉱山周辺における花崗岩、あるいは北海道・幌延町における泥岩・砂岩などの堆積岩といった地層の種類に関わらず、人工バリア(ガラス固化体+キャニスターのステンレス+オーバーバックの炭素鋼+緩衝材)と、天然バリア(地層処分される現地の岩石あるいは土壌)によって、放射能物質が住民の生活圏には拡大せず、生活用水に侵入するそれはないことを確認した」という趣旨の説明を繰り返してきた。

 しかしこれは、世界中で実証されてきた高レベル廃棄物の地中汚染の可能性を無視したもので、研究史の浅い日本には、化学的に根拠のあるデータは、ほとんど存在していない。

 むしろ逆に、ドイツのゴアレーベン最終処分場の担当官が、「日本のように地震が多発する地層に高レベル廃棄物を処分することは考えられない」と、原子力産業界から警告されるほど、常識を越えた危険な処分であると批判されている。

(つづく)  


Posted by 24wacky at 23:57Comments(1)アソシエーション