【PR】

  

Posted by TI-DA at

2011年04月03日

放射性廃棄物の行方 その2

引き続きNAM環境系MLへの投稿過去ログから。

---------------------------

『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』 広瀬隆 藤田裕幸著(東京書籍 2000年)

第2章 核燃料サイクルと放射性廃棄物の行方


49 金属容器+ガラス固化体の寿命

・キャニスターは、厚さ数ミリメートルのステンレスの容器である。内部の高レベル廃棄物が1万年にわたって放射能を出し続け、当初の表面温度が280℃にも達する高温であるため、その熱を逃がすために金属を薄くしなければならないからである。ステンレスがこのように薄く、放射能と熱による過酷な作用も受けるため、過去アメリカにおける耐食性ステンレスの漏洩事故から推測して、その寿命は長くて数十年以内、最悪の場合には数年以内に部分的な損壊が発生することも予想される。(六ヶ所村の貯蔵庫に運び込まれた高レベル廃棄物は、最終処分場が計画通り2030年に操業を開始すれば、その新しい土地に搬出するが、しかし、30年後に現在の地下貯蔵庫から取り出すとき、キャニスターが果たしてどのような状態になっているか。すでに、貯蔵庫内で放射能汚染を起こしている可能性もある。)

・このような欠陥がなく、理想的な場合でも、全ての金属は最終的にぼろぼろに腐食して、最終的には地中で影も形もなくなって消失する。その時、内容物はガラス固化体であるから、埋め戻された地中深部の高い圧力を受けて、ただちに粉々の状態にまで破壊され、そこから放射性廃棄物が全量、地層に出てくる。

 したがって、現在国際的に懸念されている汚染スタートの時期は、1万年後ではなく、長くて数十年という短期間で、金属容器が破壊しはじめたときから起こりはじめるのである。金属技術者の概念では、この過酷な条件で数十年耐えられるステンレスの容器はない。

・なぜ、脆いガラスに固めるようになったのであろうか。

 放射性物質は、毎日原子核が崩壊し、放射能を出しながら物質がどんどん変わっていくので、結晶構造が一定ではない。しかも原子炉で生まれる放射性廃棄物は200種類を超える核種の混合物であるから、一定の構造を持つ結晶として固体に閉じこめることは不可能である。

 それに対して、ガラスは非晶質であり、結晶構造はなく固体になってくれる。それでガラスを選んだわけである。

・しかし、放射性物質が閉じこめられたガラス内部では高熱が生まれている。熱したガラスに水をかければひび割れする。こうして、地層処分では、ステンレスキャニスターの腐食を促進し、ガラスをバラバラにする地下水が最大の問題となる。


50 地下水の作用

 Q:地下水が高レベル廃棄物に接触しないようにするには、どうすればいいか。

 A:地下水のない深い地層に埋めればよい。しかしこれは現実の作業では、あり得ないことがわかっている。

 地層処分とは、縦穴を掘るところから始まるが、地下水のない深い地層に達するまでに、途中に二層か三層の地下水層を貫通して穴を掘らなければならない。これは高レベル廃棄物を埋める時点で、すでに縦穴と横穴には大量の水分が侵入することを意味する。


51 高レベル廃棄物の発熱作用

 もう一つの問題が、深い地層で高レベル廃棄物が発生する熱である。その熱が内部にこもり、岩盤を膨張させれば、自ら岩盤に亀裂をつくる可能性が高い。

 また、高レベル廃棄物の表面温度は、百年後でも200℃近い高温であるから、その熱によって一帯の地下水が沸点を超えることが予想される。こうした地下水が温泉のような水蒸気になれば、地層中を高速度で浸透し、大量の腐食性元素を取り込みながら埋設地点に到達する。その結果、もっともおそれられているキャニスターの腐食を急速に早めることになる。


52 廃棄物の処分コストは

 日本の放射性廃棄物処理の総コスト

・高レベル廃棄物の発生量は、2027年までに4万本の国産キャニスター(ガラス固化体)に匹敵する。これを保管してきた六ヶ所村の日本原燃の保管料の実績では、有価証券報告書に従えば1本あたり8.5億円を出費している。
 つまり、保管料は 4万本×8.5億円=34兆円、である。

・通産省報告によれば、高レベル廃棄物の地層処分コストが約3兆円である。

・日本原燃は97年3月末で、負債残高が1兆円を突破した。この負債は、日本開発銀行や北東公庫などが貸し付けたもので、これを債務保証してきたのが電力9社、つまりは電気料金である。

《・ちなみに、96年におこなわれたアメリカ政府の試算では、「国内の放射性廃棄物の汚染除去対策に、今後75年間で最大3900億ドル(当時の46兆8000億円)が必要」という金額が出されている。(これら廃棄物の多くは、マンハッタン計画以後の核兵器開発によるハンフォードやオークリッジの汚染コストである。)》


53 電力会社の負債総額と債務保証

 世界最大の電力会社、東京電力は、95年5月に、有利子負債が10兆円という天文学的な借金財政を記録し、その借金の利子までも電気料金として消費者に負担させながら、一方では同年3月決算で、経常利益2000億円という日本一のもうけを記録した。

 東京電力の電気料金には、この10兆円の借金の利子ほぼ4%の支払いが含まれ、消費者は先進国で最も高い電気料金を請求されている。(年間一人1万円分の電気料金が利子の支払いに充てられている。)

 原発を持つ電力9社の合計負債残高は、旧国鉄をしのぐほぼ30兆円に達し、上場企業の1/6を占めている。


54 日本の処分候補地の反対状況

 地震と断層だらけの国で、どこにも危険物を埋める場所はなく、最終的に受け入れる住民もない。それでも、最終処分場は国によって決定される運命にあり、すでに10数年にわたって、全国で住民の反対運動が展開されてきた。
 2000年までに残った候補地は、北海道の幌延町、岡山県の人形峠、岐阜県の東濃鉱山一帯、そして青森県六ヶ所村の4地点に絞られている。


(つづく)
  


Posted by 24wacky at 20:00Comments(0)アソシエーション