こんな声を聴いた その3 白い息吐き
カクマクシャカと話をしていると、「ビジネスとしての東京の音楽シーン」というような言葉がよく出てくる。当然それと対比されるのは「ビジネスだけでない沖縄の音楽シーン」だろう。
ただし前者が全てダメで後者が手放しで良いと razor sharp な彼がいっているわけではもちろんない。あるいはその逆をいっているわけでもない。
絶えずその双方の現場に立ち会いながら、往来を続ける彼の批評的態度、それこそ creative なのだ。
この日2曲目に披露された『街の詩』などは、それなしには生まれ得なかったといってよい。
急ぎ足 行き交う人の群れ 白い息吐き 俺は口笛
見上げた空は すぐ色を変え 何が欲しかったか 忘れちまう
沖縄では現象し難い「白い息吐き」行き交う人の群れを眺めながら「口笛」を吹く「俺」は、口笛を吹くというまさにその行為によって、そこからもそのスピードからもかろうじて自由であることができるようだ。
この街は東京に代表される都会の雑踏でもあるようだし、変貌を遂げる沖縄の都市部の風景といえなくもないし、あるいはどちらでもないのかもしれない。ただ、「俺」がとても孤独であることは間違いない。
ただその孤独がフォークの時代から表象されてきた地方から東京へ出てきた若者が訴える「都会の孤独」と明らかに違うのは、「俺」がトランスな空間に立っているから。
WSでのパフォーマンスで沖大講義室に還ってきた彼は、そこに居合わせた人たちをもその空間に誘った。
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