沖縄アソシエーショニズムへ 35 官僚と政治の間に楔を打ち込むa
シンポジウム『沖縄のマスコミが見た世界の米軍基地』の質疑応答で、客席から真喜志好一さん恒例のマイクパフォーマンスがあった。真喜志さんはそこで次のようなとても重要な指摘をしている。
真喜志好一さん
オスプレイ配備について日本政府は否定し続けているが、1996年11月防衛庁の高見沢という役人が在日米軍司令部に文書を持っていっている。オスプレイ配備について沖縄から質問があるだろうが、防衛庁にとって都合の良い回答はこれであるからよろしくという内容の。高見沢は現在防衛省ナンバー2の防衛政策局長。彼は北沢防衛相来沖時にも、グアム視察時にも同行している。つまり官僚は自公政権から変わらず引き継いでいる。これでは政権交代にはならないではないかという運動を現政権に対してやっていくべき。
高江のヘリパッド問題について。計画されている新たなヘリパッドは直径45メートルの平坦なもの。これはオスプレイが離発着するときのサイズ。座り込み住民に対して、沖縄防衛局は通行妨害の申立てをして、2名についての本裁判が決定した。これに対し、わたしたちは政治の世界に申し入れをしてきたが、ここでも防衛官僚が動き出して、本裁判に訴えてしまった。
高江ヘリパッド、防衛局が住民提訴 住民側は抗議声明
琉球新報1月30日付
「区民の総意は反対」 高江ヘリパッド説明会
沖縄タイムス2月2日付
この本裁判の報告をある沖縄選出国会議員にしにきたのが、かつて那覇防衛施設局にいたマスガ防衛運用課長。メディアの皆さん、官僚と政治の間に楔を打ち込んで、正しく平和が創れるようにがんばっていただきたい。
「危険な普天間基地は県外か国外へ」という民主党の方針に沖縄は期待している。昨年の衆院選も、そして少なからず1月の名護市長選の結果も、その期待の盛り上がりを反映している。前自民党政権とは違い、沖縄の負担軽減を実現してくれるという期待が。
高江のヘリパッド問題についても、関係者は同じ期待をもって、民主党政権が事業中止の政治判断をしてくれるのではないかと地道な運動が続けられる。
東京要請行動報告 やんばる東村 高江の現状1月22日付
提訴断念へ4721人署名 同1月29日付
しかしその淡い期待と身を切るような運動もつかの間、防衛省は住民2名を提訴した。「これでは政権交代にはならないではないかという運動」なり主張を公然とすべきであることはいうまでもない。
偶然か意図的か、日を同じくして、鳩山首相初の所信表明演説という大きなニュースが一面を飾り、そこでは「命を守る」政治が連呼された。提訴された2名はもとより、騒音・墜落被害を訴える高江住民にしてみれば、これほどの笑えないジョークはない。
念のためいうが、私は鳩山首相の所信表明演説をそれなりに評価している。それは前自民党政権時代のそれに比べれば、官僚が用意したそのままのペーパーでなく、自分の言葉で高らかに理念を語ったという点、そしてその「命を守る」理念の中身について、こんな言葉が政治の場で我が国のリーダーから発せられるのかという驚きからきている。
これに対する批判として、島尻安伊子参院議員(自民党沖縄)は「政治は超現実の世界であり、どう実現するかだ。理想ばかり並べてもらっても困る」とコメントしている(沖縄タイムス1月30日付)。一見よく分からないコメントだが、要するに「政治は権力を行使してやった者勝ち、結果オーライ」というようなことをいいたいのかなと解釈してみる。
私にも政治がそのような世界であることくらいは分かる。だからこそ、そのような世界で理念を語り、その実現にトライすることを評価したい。台所から政治を変える彼女に、語れるほどの理念が果たしてあるのだろうか。むしろそちらのほうが問題ではないかと思う。沖縄の有権者には来る参院選でそのあたりをチェックしてほしい。
話題が逸れてしまった。重要なことは官僚制への批判という視点である。これは運動サイドでもこれまであまり無かった視点ではないか。真喜志さんの抱く楔の打ち方とは離れてしまうかもしれないが、次回そのことについて書いてみたい(理念を語ります)。
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