2018年02月24日
『ルポ川崎』磯部凉
第1話のタイトルにあるように、この町で生きることはディストピアといって差し支えないほどの、この本に登場する主に若者たちは壮絶な生を過ごしている。それはサウスサイドと自他共に呼称し、行政として括られた一画をさらに差別化する居場所としてある。それを読む多摩川河川敷の向こう側への私の眼差しは冷水を浴びせられる。貧困の連鎖という生を受けた不良少年たちからヒップホップの当事者性の弾が飛ぶ。エッジは淀んでいる。
『ルポ川崎』
著者:磯部凉
発行:CYZO
発行年月:2017年12月26日
2018/02/05
「新橋方面近道」と表示された薄暗い通路に足を踏み入れるには勇気がいるようだ。奥を覗いても人の気配がしない。有楽町駅から新橋駅方面に高架下を直行するその道は、もともと飲食街であったがほとんど廃墟と化している。その途中で不気味な女の壁画が不意をつく。「アンダーグラウンド」の導入部としては完璧であ…
2017/02/28
「裸足で逃げる」とは、なんと沖縄の「現実」に刺さるタイトルだろう。あの亜熱帯の夜の、生暖かい、しかしひんやりとしたアスファルトを思わず踏みしめたときの素足の触覚が、混濁したいくつものエモーションを拓き、一条の微かな光線の可能性を喚起させる。コザのゲート通りをゲート側から捉えた夜景の表紙写真と…
2017/01/22
「危ない」「汚い」「騒がしい」というネガティブなイメージをもたれる蒲田を、地元愛溢れる著者が「そうではなく、こんなに魅力的なのです」と「逆襲」していく。そしてそれは成功している。丹念なリサーチによって、地元の私でも「え、そうだったんだ!」と初めて知る驚きの情報もあり、カオスな地域性はわかって…
2016/07/24
先日友人の誘いで谷中にある沖縄料理屋「あさと」を訪れた際、店舗の入る木造アーケードに関心が向いた。それは地元にもかつてあった「マーケット」の形状をいかにも思い起こさせるようであったから。初音小路と名づけられたその飲屋街は、夜になれば各々の店の灯で明るくなるものの、先に昼間訪れたときには薄暗い…
Posted by 24wacky at 19:40│Comments(0)
│今日は一日本を読んで暮らした