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2019年03月23日

『結婚式のメンバー』カーソン・マッカラーズ

『結婚式のメンバー』カーソン・マッカラーズ

 アメリカ南部の田舎町で育った12歳の少女フランキーは、兄の結婚式に出席し、そのまま新婚夫婦にハネムーンに連れて行ってもらい、色褪せた土地へは二度と戻らないという妄想的アイデアに固執する。小説前半は結婚式前日の昼下がり、黒人の女料理人ベレニスと従弟ジョン・ヘンリーとの台所で交わされるいつ果てるともないおしゃべりが占める。

 村上春樹による訳者解説によれば、作者マッカラーズの自伝的要素の濃い作品だという。同じく南部の田舎で育ち、周囲に順応できない“変わった”少女マッカラーズは、ピアニストあるいは小説家になるという夢を叶えるために、生まれた土地を離れる。そのような芸術家誕生物語を、兄の結婚式に出席し「ここではないどこか」に連れ出されるという妄想譚へと変成させた作家の想像力は私の想像を超える。肝心の結婚式は小説の終盤、回想的に短く書かれるのみ。結婚式に「行って帰る」物語に容易にしないたくらみに深くハマるために、これからも読み返すことになるだろう。

『結婚式のメンバー』村上柴田翻訳堂
著者:カーソン・マッカラーズ
訳者:村上春樹
発行:新潮文庫
発行年月:2016年4月1日


2009/08/03
『1Q84』
ようやくのことで驚異的なベストセラー『1Q84』を読むことができた。村上春樹の長編を読みことが常にそうさせるように、今回も怒涛のような読書体験ーーつまり夜の明けるのも気にならぬほどただひたすら次の頁をめくるようなーーとなった。日常の煩雑な用事をすますためにしばしの中断をせざるを得ないときも、作品世界か…



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