2008年01月07日
琉球の「自治」
琉球の「自治」
松島泰勝著 藤原書店 2007年
軍事基地だけでなく、開発・観光のあり方から問い直さなければ琉球の平和と繁栄は訪れない。琉球人である著者が、豊富なデータをもとに、それぞれの島が「自立」しうる道を模索し、世界の島嶼間ネットワークや独立運動を検証。


第二部 琉球の開発と密接に結びつく米軍基地
第四章 琉球の開発と米軍基地
本章では開発と米軍基地の関係が論じられる。沖縄の「本土復帰」時に採られた開発手法は拠点開発方式、つまり、工業地帯、石油化学コンビナートなどの大規模な開発拠点を設置し、周辺地域に経済効果を波及させる手法のこと。ここで著者は重要な指摘をしている。これらの開発はいわゆる本土との「格差是正」のためのものと一般的には認知されているが、それのみではなく、次に準備される東南アジアへの援助計画のための実験・調査、つまり日本の国土開発として位置づけられていたという。すなわち、沖縄を国際化、その中核地域を都市化し、情報や交通をネットワーク化し諸外国と結ぶ。そのための大型港湾の建設、国際空港の整備拡張、交通網の整備であった(私見ではこの思想は昨年安倍政権が打ち出した「アジアゲートウェイ構想」まで続く)。
著者は基地と開発の類似点を強調する。上記の通り開発も国家戦略の一部であり、安全保障体制の根幹である米軍基地とその点は同じだ。また両者は自然環境や地域共同体を破壊し、対外的依存度が高い点でも似ている、と。拠点開発主義を踏襲している観光も同じ構造を持つことから、観光・開発・基地の三位一体構造といえる。「基地にはNOだが観光は良いもの」とする立場は矛盾していると著者はいう。
ではこれら問題含みの開発に対して、沖縄側はどう認識してきたか?沖縄側の回答とそれに対する著者の指摘部分を長くなるが引用する。
2003年以降の南琉球における開発の方向性を決める沖縄振興計画の内容を巡って、沖縄県議会で以下のような議論が展開された。「新たな沖縄振興に当たっては、今後とも国の責務による支援が必要であります。そのため、沖縄振興計画については引き続き国の責任で策定されるとともに、これまで大きな役割を果たしてきた社会基盤等に係る効率補助等特別の措置を講ずることについても、現行のまま沖縄振興新法に引き継ぐ必要があるものと考えております」。沖縄県庁側から効率補助の継続を求めており、国への依存度を深め、それから抜け出そうとしておらず、国に新計画の策定を求める他人任せの姿勢が明確である。(P.103~104)
その後も経済自立目標が達成されなかった責任を外部に転換し、尚いっそうの開発が必要であると求める県の姿勢が批判されている。そしてこのように「格差是正」、「高率補助」、「開発」を求める姿勢は野党革新側も同じだ。そこにあるのは、沖縄戦から続く歴史的政治的格差は日本政府の責任であるから、その代償を求めるのは当然であるという共通の認識である。これに対し著者は「日本政府の責任を追及する手段として『格差是正策』は考えられており、琉球人は島の開発を国の当然の義務とみなし、開発に対し傍観者的立場にたった。開発が失敗しても日本政府の責任を問えば済むという、琉球の開発を他人任せにする風潮が生まれたのではないか」と嘆く。
松島泰勝著 藤原書店 2007年
軍事基地だけでなく、開発・観光のあり方から問い直さなければ琉球の平和と繁栄は訪れない。琉球人である著者が、豊富なデータをもとに、それぞれの島が「自立」しうる道を模索し、世界の島嶼間ネットワークや独立運動を検証。


第二部 琉球の開発と密接に結びつく米軍基地
第四章 琉球の開発と米軍基地
本章では開発と米軍基地の関係が論じられる。沖縄の「本土復帰」時に採られた開発手法は拠点開発方式、つまり、工業地帯、石油化学コンビナートなどの大規模な開発拠点を設置し、周辺地域に経済効果を波及させる手法のこと。ここで著者は重要な指摘をしている。これらの開発はいわゆる本土との「格差是正」のためのものと一般的には認知されているが、それのみではなく、次に準備される東南アジアへの援助計画のための実験・調査、つまり日本の国土開発として位置づけられていたという。すなわち、沖縄を国際化、その中核地域を都市化し、情報や交通をネットワーク化し諸外国と結ぶ。そのための大型港湾の建設、国際空港の整備拡張、交通網の整備であった(私見ではこの思想は昨年安倍政権が打ち出した「アジアゲートウェイ構想」まで続く)。
著者は基地と開発の類似点を強調する。上記の通り開発も国家戦略の一部であり、安全保障体制の根幹である米軍基地とその点は同じだ。また両者は自然環境や地域共同体を破壊し、対外的依存度が高い点でも似ている、と。拠点開発主義を踏襲している観光も同じ構造を持つことから、観光・開発・基地の三位一体構造といえる。「基地にはNOだが観光は良いもの」とする立場は矛盾していると著者はいう。
ではこれら問題含みの開発に対して、沖縄側はどう認識してきたか?沖縄側の回答とそれに対する著者の指摘部分を長くなるが引用する。
2003年以降の南琉球における開発の方向性を決める沖縄振興計画の内容を巡って、沖縄県議会で以下のような議論が展開された。「新たな沖縄振興に当たっては、今後とも国の責務による支援が必要であります。そのため、沖縄振興計画については引き続き国の責任で策定されるとともに、これまで大きな役割を果たしてきた社会基盤等に係る効率補助等特別の措置を講ずることについても、現行のまま沖縄振興新法に引き継ぐ必要があるものと考えております」。沖縄県庁側から効率補助の継続を求めており、国への依存度を深め、それから抜け出そうとしておらず、国に新計画の策定を求める他人任せの姿勢が明確である。(P.103~104)
その後も経済自立目標が達成されなかった責任を外部に転換し、尚いっそうの開発が必要であると求める県の姿勢が批判されている。そしてこのように「格差是正」、「高率補助」、「開発」を求める姿勢は野党革新側も同じだ。そこにあるのは、沖縄戦から続く歴史的政治的格差は日本政府の責任であるから、その代償を求めるのは当然であるという共通の認識である。これに対し著者は「日本政府の責任を追及する手段として『格差是正策』は考えられており、琉球人は島の開発を国の当然の義務とみなし、開発に対し傍観者的立場にたった。開発が失敗しても日本政府の責任を問えば済むという、琉球の開発を他人任せにする風潮が生まれたのではないか」と嘆く。
(つづく)
Posted by 24wacky at 19:03│Comments(0)
│今日は一日本を読んで暮らした
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