2009年05月08日
まだ涙が出ない NAUGHTY BOY
同じくアルバム『MARVY』から。シングル・カットもされたこの曲には、キヨシローの新しい態度が見受けられる。
離れ離れの心は二度と元には戻りそうもない
いたずらっ子だったあいつも
俺が仕掛けた罠を鼻であしらう
well 何がそんなにおかしいの no naughty boy
well 何が変わったいつからそんなに
落ちついていられるの
naughty boy
you naughty boy
1行目の「離れ離れの心は二度と戻りそうもない」は、男と女の別れの心情を歌っているのかと思うと、2行目以降へうまくつながらない。かつてはnaughty boy(いたずらっ子)だった「あいつ」から、今では鼻であしらわれる「俺」。そう、「あいつ」は無垢の世界から「経験」の世界へと成長してしまったのだ。そしてそれは「二度と戻れ」ない。
では「あいつ」とは誰だろう?それはかつての「俺」のことに他ならない。「離れ離れの心」とは、ひとりの人間の精神と肉体に不可避的に起こる無垢と経験の世界を指している。既にどっぷりと経験の世界に入ってしまった人間が、無垢の世界へ二度と戻れないことに悲しんでいる歌なのだ。
キヨシローは、そこらにいくらでもいる「ただのオヤジ」をたんに批判しているのではない。自分も既にそうであることを自覚し、それでも「落ちついていられる」ことに悲哀を感じている。「少年のような」としばしば評される彼の内心は、そう評されることに自嘲を禁じえなかったことだろう。アルバムにバッキング・ボーカルとして全面参加している金子マリとのスリリングかつ官能的な声楽は、そこが紛れもなく経験の世界であることを露にしている。
Posted by 24wacky at 00:39│Comments(0)
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