2009年08月23日
沖縄「自立」への道を求めて 我部論文
基地に依存しなければ、沖縄の経済は成りたたない。このような「常識」を覆し発想の転換を促すために県内の14人の専門家が立ち上がった。昨年から今年にかけて「いまこそ発想の転換を!」実行委員会は数回のシンポジウム、ティーチインを重ねた。その成果が本書である。
第1回シンポの様子
↓
沖縄に「押しつけられた常識を覆す」、那覇市の集会で学者が議論
第1回シンポの様子
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沖縄に「押しつけられた常識を覆す」、那覇市の集会で学者が議論
本書を呼んだ私は、まずは変わらない基地との共存を60年以上強いられ、あきらめの実生活を送る沖縄の人びとに対し、今一度自分たちの「常識」を疑うことを勧める。そのことの結果はいずれ自分たちに返ってくるのだから、自分のために、エゴのために、生活のために、本書を読んで硬直化した頭と身体を活性化してほしい。
次に本書を、昨今の本土メディアにおける沖縄観、そしてそれを受けて形成される国民意識、「沖縄は戦争反対、基地反対といいながら、実際は基地無しでは生活できないので、カネを引き出すためにそういう振りをしている。そんなヤツラにこれ以上甘い顔をする必要はない」に対して、札びらならぬ本書で頬を叩いてやるために使いたい。
本書にはそれほど対抗のための、対話のための智慧が横溢している。容易に一まとめにはできそうもないため、ここではまず重要だとみなす論点についてひとつずつ触れることにする。
沖縄を米アジア戦略の中心と見る「神話」
我部政明 琉球大学教授(国際政治学)
我部政明が覆そうとしている「常識」は、在沖米軍はアジア戦略の中心的位置づけ(極東の要石)としてあり、撤退することはありえないという常識である。具体的には、朝鮮半島有事に想定される海兵隊の対応について論じられ、海兵隊のための新基地建設は軍事的にみて不要であるという結論に導く。
在沖米軍の地上部隊として陸軍は存在しないため、海兵隊のみの出動となる。朝鮮有事の際に送られる海兵隊は31MEUという部隊で、その規模は3500名といわれている。海兵隊が陸軍と違う点は、航空機と一体となって地上作戦を展開することにあり、そのため海兵隊は飛行場を必要とする。彼らは普天間飛行場に配備されるヘリなどと共に陸揚艦に積み込まれ最前線に送り込まれる。
計画中の辺野古新基地建設では、飛行場機能としては普天間より小規模である。つまり米軍は有事の際に海兵隊による大規模な展開は考えていない。朝鮮有事に対して海兵隊の大規模派兵が考えられているのはグアムであり、そこでは大きな港湾施設の整備と海兵隊用の航空施設の建設が計画されている。これが実行されれば在沖米軍基地から海兵隊は必要なくなる。「軍事的に見ると、沖縄に米海兵隊のための新基地は不要なのである。新飛行場建設は軍事的合理性を欠いている」。ただし、我部は新飛行場の滑走路延長の可能性も示唆し、その際は米軍の眼差しがグアムから再び沖縄へ注がれ、恒久的な基地建設に結果すると危惧している。
我部の論点は朝鮮半島有事における米海兵隊の対応に絞られている。在沖米軍の軍事的不合理性をいうなら、さらに中国への対応について述べてほしかった。中国脅威論者に対して冷静な議論ができるように。
次に注目すべきは、那覇空港拡張計画に潜む問題を指摘している点だ。那覇空港拡張計画とは、那覇空港の沖合いを埋立て滑走路を一本追加し、物資輸送機能を高めたハブ空港を目指すというものだ。これまで自衛隊の運用・配置は触れられていないものの、我部は千歳空港を例に、新しい滑走路が民間用、既存の滑走路が自衛隊専用にされる可能性を指摘している。その際自衛隊と米軍の共同使用は当然あり得る。
もし普天間飛行場を返還し、ヘリ部隊を沖縄に残すとすれば、辺野古新基地か、那覇空港の米軍自衛隊共同使用滑走路のいずれかになるだろうと我部は警鐘を鳴らす。
県内メディアの報道でも、このような那覇空港拡張計画での自衛隊使用は触れられていないと記憶している。既にパブリックインボルブメントも実施された後に、この情報は驚くべきである。
次に本書を、昨今の本土メディアにおける沖縄観、そしてそれを受けて形成される国民意識、「沖縄は戦争反対、基地反対といいながら、実際は基地無しでは生活できないので、カネを引き出すためにそういう振りをしている。そんなヤツラにこれ以上甘い顔をする必要はない」に対して、札びらならぬ本書で頬を叩いてやるために使いたい。
本書にはそれほど対抗のための、対話のための智慧が横溢している。容易に一まとめにはできそうもないため、ここではまず重要だとみなす論点についてひとつずつ触れることにする。
沖縄を米アジア戦略の中心と見る「神話」
我部政明 琉球大学教授(国際政治学)
我部政明が覆そうとしている「常識」は、在沖米軍はアジア戦略の中心的位置づけ(極東の要石)としてあり、撤退することはありえないという常識である。具体的には、朝鮮半島有事に想定される海兵隊の対応について論じられ、海兵隊のための新基地建設は軍事的にみて不要であるという結論に導く。
在沖米軍の地上部隊として陸軍は存在しないため、海兵隊のみの出動となる。朝鮮有事の際に送られる海兵隊は31MEUという部隊で、その規模は3500名といわれている。海兵隊が陸軍と違う点は、航空機と一体となって地上作戦を展開することにあり、そのため海兵隊は飛行場を必要とする。彼らは普天間飛行場に配備されるヘリなどと共に陸揚艦に積み込まれ最前線に送り込まれる。
計画中の辺野古新基地建設では、飛行場機能としては普天間より小規模である。つまり米軍は有事の際に海兵隊による大規模な展開は考えていない。朝鮮有事に対して海兵隊の大規模派兵が考えられているのはグアムであり、そこでは大きな港湾施設の整備と海兵隊用の航空施設の建設が計画されている。これが実行されれば在沖米軍基地から海兵隊は必要なくなる。「軍事的に見ると、沖縄に米海兵隊のための新基地は不要なのである。新飛行場建設は軍事的合理性を欠いている」。ただし、我部は新飛行場の滑走路延長の可能性も示唆し、その際は米軍の眼差しがグアムから再び沖縄へ注がれ、恒久的な基地建設に結果すると危惧している。
我部の論点は朝鮮半島有事における米海兵隊の対応に絞られている。在沖米軍の軍事的不合理性をいうなら、さらに中国への対応について述べてほしかった。中国脅威論者に対して冷静な議論ができるように。
次に注目すべきは、那覇空港拡張計画に潜む問題を指摘している点だ。那覇空港拡張計画とは、那覇空港の沖合いを埋立て滑走路を一本追加し、物資輸送機能を高めたハブ空港を目指すというものだ。これまで自衛隊の運用・配置は触れられていないものの、我部は千歳空港を例に、新しい滑走路が民間用、既存の滑走路が自衛隊専用にされる可能性を指摘している。その際自衛隊と米軍の共同使用は当然あり得る。
もし普天間飛行場を返還し、ヘリ部隊を沖縄に残すとすれば、辺野古新基地か、那覇空港の米軍自衛隊共同使用滑走路のいずれかになるだろうと我部は警鐘を鳴らす。
県内メディアの報道でも、このような那覇空港拡張計画での自衛隊使用は触れられていないと記憶している。既にパブリックインボルブメントも実施された後に、この情報は驚くべきである。
Posted by 24wacky at 19:22│Comments(0)
│今日は一日本を読んで暮らした