てぃーだブログ › 「癒しの島」から「冷やしの島」へ › 今日は一日本を読んで暮らした › 沖縄「自立」への道を求めて 佐藤論文

2009年08月24日

沖縄「自立」への道を求めて 佐藤論文

オバマ政権のアメリカ --経済と対外政策の変化
佐藤学 沖縄国際大学教授(地方自治・アメリカ政治)


グアム移転協定は、オバマ政権成立後、クリントン米国務長官が来日した今年2月、中曽根弘文外相との間で締結され、4月には議会で可決された。移転協定前文には(1)グアム移転(2)普天間移設(3)嘉手納以南の基地返還の3つが「パッケージ」として盛り込まれた。グアム移転協定の中に「ロードマップ(2006年5月に日米安全保障協議委員会で合意された在日米軍再編に関する最終報告)の順守」が明記された。



その意図は、ロードマップを政治文書から条約と同レベルの合意に引き上げることによって、日米合意案に強い法的拘束力をもたせることにあった。それをなぜオバマ新政権の挨拶回りにやってきたクリントンと日本政府が締結させたかといえば、次期衆院選で政権交代がなされた場合でも、米軍再編は最終報告に盛り込まれた合意案通りに進めるとの姿勢を明確にする狙いがある。

この問題を県内メディアは大きく取り上げ、沖縄差別だと批判し([グアム移転協定]疑問が多く納得できぬ)、市民も警戒感を露にした(グアム移転協定反対 那覇市内で市民がデモ)。私自身も強められた拘束力に無力感を抱かされた。

一方、日本の大手メディアがクリントン来日について報じたことは、北朝鮮の核開発・弾道ミサイル問題や国際的な金融危機への対応、地球温暖化問題、民主党小沢代表(当時)との会談による日米同盟についての確認などに終始し、グアム移転協定の重要性が国民の多くに知らされることはなかった。

しかし、佐藤学は、グアム移転協定は米国連邦議会の関わりが無い「行政協定」であることを指摘し、日本の政治制度からのみ物事を見る「常識」を覆す。

「米国政府」で予算の支出を決める権限は、連邦議会のみが持つ。行政府=大統領=国務長官が、何を約束しようと、議会にはそれに従う義務はない。米国政府は、議院内閣制の日本とは異なる、権力分立をより徹底させた大統領制の政府を持つ。


オバマ政権にとって経済・財政問題こそ最大の懸案事項である。連邦議会がグアム移転費用を予算化しない可能性もあり得る。米政府がこれまで従順だった日本政府にさらなる予算の拠出を求めてくることも考えられるが、日本にも財政的余裕はない。つまり、「日米政府の財政悪化が、移設協定、辺野古・高江の基地建設を阻害する要因になりうる」。

佐藤は、グアム移転協定がアメリカの国益を損なうことを、オバマ政権に対し訴えること、それも国務省経由ではない政治的回路を使って、在沖米軍についての詳細を知らされていない政権中枢に訴えることを提案している。



同じカテゴリー(今日は一日本を読んで暮らした)の記事
2019年 本ベスト10
2019年 本ベスト10(2019-12-23 21:08)


 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。