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2011年03月31日

放射性廃棄物とは 前編

引き続きNAM環境系MLへの投稿過去ログから。

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『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』 
広瀬隆 藤田裕幸著(東京書籍 2000年)


第2章 核燃料サイクルと放射性廃棄物の行方


39 高レベル放射性廃棄物の最終処分の方針

・地層処分計画
  
  使用済み核燃料を硝酸に溶かして核分裂生成物を取り出す
      ↓
  高レベル廃液となる
      ↓
  高温度のガラスに溶かしながら、ボンベ状のステンレス容器(キャニスター)に注入する
      ↓
  ガラス固化体となる
      ↓
  この高レベル放射性廃棄物(死の灰の塊)を地中(最終処分場)に埋め、人間から隔離しようとする     


40 原発が生み出す電力と廃棄物の量

 Q:原子力を推進する電力会社と国の説明には、「ごく微量のウランが大量のエネルギーを出す」という文句が頻繁に使われるが、これは本当だろうか?

 A:微量のウランが大量のエネルギーを生み出すという話は、ウラン残土から超危険物の高レベル廃棄物に至る放射性廃棄物の総量のうち、0.00004%の重量にしかならない部分だけを説明しているに過ぎない。その部分を核分裂に利用しても、掘り出した資源の残り99.99996%を再利用できず、廃棄しなければならない産業が、原子力である。

・100万キロワットの巨大原発があったとする。これが平均稼働率80%で運転すると、1年間で70億キロワットの電力(2000年時点で日本の消費電力の0.8%)を生み出す。

・この原子炉を一回(ほぼ一年間)運転するには、核分裂性ウランを1トン必要とし、その核分裂によって30トンの使用済み核燃料(のちの高レベル廃棄物)と、ドラム缶1000本の低レベル廃棄物が発生する。

・この30トンの使用済み核燃料をガラス固化体に変えて地中に処分しようとすれば、再処理が必要になり、高レベル廃棄物のキャニスターが30本発生し、全プルトニウムが300キログラム(うち核分裂性プルトニウムが約200キログラム)発生、さらに残りがウラン(現在ほとんど用途のない回収ウラン)となる。

・また核分裂性ウランを燃料として1トン燃やすには、濃縮加工工場で低濃縮ウラン燃料を30トンつくり、原子炉に装荷しなければならない。その濃縮過程では、160トンの「劣化ウラン」が有害廃棄物として発生する。 

・またその燃料工場の原料を製造するには、精錬工場で190トンの天然ウランを分離抽出する必要があり、その過程で天然ウランの700倍近い重量の有害残滓13万トンが発生する。

・しかもその精錬原料である13万トンのウラン鉱石を生み出すには、ウラン鉱山で一次原料を採掘し、ウラン鉱石の20倍近い250万トンのウラン残土が発生する。

・これだけ大量の危険な放射性物質を発生して、ようやく0.8%の電気が発生する。

・2000年時点で、日本の商業用原発51基(4491.7万キロワット)を運転するために、毎年この45倍の廃棄物を生み出し、電力の35%ほどがつくられている。

・資源のリサイクルと、毒性物質の大幅減少が求められる時代に、これほど原料を無駄に捨てながら、危険物を放出するエネルギー産業は他にはない。


41 廃炉から出る廃棄物の行方

 Q:原発の寿命は?そして、廃炉の処分は?
 
 A:金属材料の寿命は、通常の大型機器では30年であり、中性子など強力な放射線を受け、高温度と高湿度、振動にさらされる過酷な条件で使われる原子炉は、すでに大半が老朽化して危険領域には行っている。

 ところが新しい原発の建設がほとんど不可能な社会状況を迎えた苦境の原子力産業は、原子力部門の技術者を維持するために老朽機器のメンテナンスで生きのびながら、従来考えられてきた寿命30年を大幅に延ばして、危険な原子炉を使い続けようとしている。

 それでも日本の原発は、1966年に最初の原発が運転開始以来、34年が経過し、これから続々と閉鎖(廃炉)になる。仮に2041年までに全ての原子炉が閉鎖されるとすれば、閉鎖原子炉の全てが巨大な放射性廃棄物になる。

 ところが原子力安全委員会(放射性廃棄物対策専門部会)は、廃炉で生ずる放射性コンクリートや金属の9割以上を、一般廃棄物として捨てられる、という報告書を98年12月15日に公表して、一般消費者だけでなく、工業界でも問題になっている。

 続いて、通産省の諮問機関・総合エネルギー調査会が99年3月に出した「産業用原子力発電施設解体廃棄物の処理処分に向けて」と題する報告でも、原子炉周囲の格納容器内部だけを放射性廃棄物として扱い、残りは全て一般廃棄物とする方針となった。これは量が膨大であるため、これを放射性廃棄物扱いすると、処理コストがかかって採算がとれないという理由から、一定以下の放射能であれば切り捨てるという乱暴なプランである。

 つまり、全体の97%に相当する大部分の放射性廃棄物が、一般ゴミとして、日常の家庭生活に侵入してくるのである。


42 高レベル廃棄物(ガラス固化体)の放射能量とは

 Q:最近、「地中から掘り出した放射性のウランを、使い終わったあと放射性廃棄物として地中に戻すのが最終処分だから、問題ない」という説明がなされることがあるが、これは本当だろうか?

 A:ウラン燃料1トン中の放射能は、100ギガベクレルである。これに対し、核分裂後に取り出された使用済み核燃料1トン中の放射能は、100億ギガベクレルである。つまりウランを原子炉で燃やせば、核分裂によって放射能が一挙に1億倍に増大する。地中にあったものを、再び地中に戻すというどころの話ではない。

 Q:2000年3月に閣議決定された高レベル廃棄物の地層処分計画では、ガラス固化体として管理した後、30年後に地層処分が開始され、ほぼ100年後に処分場を埋め戻して閉鎖する予定である。1億倍にも高められた放射能はどうなるのであろうか?

 A:原子炉から取り出して約1ヶ月後の使用済み核燃料が、ほぼ5年後にガラス固化体と変わり、30年後にも放射能は1/30までしか下がらず、100年の長期に渡って管理した後でも、放射能はまだ1/160にしか下がらない。

 人間の世代に置き換えれば、父母の世代に地中から掘り出したウランを使って電気を使い、とてつもなく放射能を高めてから、まだほとんど放射能が下がらない30年後に、その息子と娘の時代になって、地中に埋め始める。そして100年後に、この埋め戻し現場に立ち会い、危険物の上で生きてゆかなければならない孫や曾孫にとって、祖父母や父母が犯した罪は極めて重大かつ許し難い問題である。

 Q:ガラス固化体の放射能は、人体に対してどのような危険性を持っているのか?

 A:動燃と改組後の核燃機構は、ガラス固化体のキャニスターの傍らに人間が立っている写真をパンフレットに多用し、安全のPRにつとめてきたが、万一そのような場所に立てば、人間は即死する。

 ガラス固化体のキャニスター表面では、1時間あたり1万4000シーベルトのガンマ線を被曝する。人間は、短時間に50シーベルトのガンマ線に被曝すれば、2日以内に全員が死亡するが、キャニスター表面は、そのほぼ300倍の放射線を放っている。

 さらに、キャニスター容器から1メートル離れても420シーベルト、2メートル離れても140シーベルトを被曝して死亡する。


(つづく)



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