2005年10月10日
沖縄「戦後」ゼロ年
『沖縄「戦後」ゼロ年』 目取真俊著 NHK出版生活人選書 2005年
の読後メモ。
「書評」を書くつもりでいたが諦めた。この激烈なる書はヤマトン
チューである私に容易にはそうさせない「恨」に満ちているから。
以下この駄文は一人でも多くの「日本人」に読ませたい、という暴
力的な思いからのみ書き綴られる。
来沖する以前の東京時代、私は環境運動などを主に社会運動の活動
に熱中していた。ヒトとモノが溢れかえるその場所で、さらに時代
はインターネットによる情報のやり取りを必須化させる。その中に
は国家に管理・操作されていない真に必要な情報があり、パソコン
に向かいながら正気を保ちつつ、物事をグローバルに考える修練を
積む、という利点があったのは事実だろう。
だが、そこでも「沖縄」は抜け落ちていた。
私は直観した、グローバルな問題、アメリカ~中国~日本~沖縄~
etc の坩堝、それが沖縄である。そしてまた、東京生活という「繁
栄」の裏面の沖縄問題、それに向かわずして何の解決があろうかと。
~「戦後六十年」があたかも憲法九条があったが故に戦争を免れ、
日本が平和を保てた六十年であった、とまとめられてしまうこと
の問題があります。憲法九条をターゲットとして改憲の動きが強
まっていることに対して、憲法九条の意義や大切さを強調するた
めに、この六十年を「平和」な時代であった、と護憲派が強調し
たりする。
~「戦後」日本の経済成長によって生活が向上し、それが多くの
日本人に「平和」を実感させたと思いますが、その足下に踏みつ
けられていたのは何だったのか。そのことを忘れて、あるいは意
識的に無視して「平和」な時代としての「戦後六十年」を語るこ
とは欺瞞に満ちています。「平和憲法」と「日米安保条約」を共
存させ、在日米軍の存在によって「国防」予算を抑え、経済成長
を優先させる。そのような戦後日本のあり方は、沖縄に在日米軍
基地(専用施設)の七五パーセントを集中させること、つまり日
米安保体制の負担と矛盾を沖縄に押しつけることによって可能と
なったのです。(13~14ページ)
この沖縄の常識が相変わらず日本の常識とならないのは、「日本人」
の無関心による。「日本人」が無関心なのは、国家による教育も含
めた情報管理が第一要因だろう。真の情報を隠すことと別の情報を
意図的に流すこと。これによって平和運動などに携わる「意識のあ
る」人たちでさえ沖縄を足下に踏みつけていることに気づかない。
知らないからといって済まされないこともあるのだ。
「青い海青い空」の観光消費イメージ、「ちゅらさん」「ナビーの
恋」に代表される暖かくおおらか(テーゲー?)という紋切り型の
人物造形によって捏造される「癒しの島」。この垂れ流しによって
さらに真に「そこにあること」は隠蔽される。
ヤマトンチューが沖縄を消費していることに対して沖縄から批判の
声が上がっている。勝手なイメージを作り上げブームに乗って移住
してきて好きなところだけつまみ食い、基地問題など暗い現実には
見向きもしない身勝手さにいい加減にしろ、といっている。
自分達が、沖縄大好き、沖縄ファンで、沖縄びいきで、積極的
に沖縄に親しもうとしていることを肯定的にだけ見るのではなく
して、それが一種の暴力性を持っているのだということを反省し
ていかなければ、軋轢は解消しないですよ。基本的に、お互い立
っているスタンスが違うんだ、ということをですね。その違いは
簡単に融和したり、乗り越えたりできないはずなんです。
(171ページ)
私がここ沖縄で日常生活に使う「標準語」は明らかに暴力装置とし
て働いている。communication が discommunication を絶えず誘発
しているという事実。そしてまた、仮に私が「ウチナーグチ講座」
にでも通って、「ウチナーグチ」を完璧にマスターしたとして、そ
れだけで私は認められるなどと期待してはいけない。「簡単に融和
したり、乗り越えたりできない」のだから。その二律背反の中で、
尚ここに立つことの理論と実践。それがこの書に対する答えとして
「あえて」これから続けていくよすがである。
の読後メモ。
「書評」を書くつもりでいたが諦めた。この激烈なる書はヤマトン
チューである私に容易にはそうさせない「恨」に満ちているから。
以下この駄文は一人でも多くの「日本人」に読ませたい、という暴
力的な思いからのみ書き綴られる。
来沖する以前の東京時代、私は環境運動などを主に社会運動の活動
に熱中していた。ヒトとモノが溢れかえるその場所で、さらに時代
はインターネットによる情報のやり取りを必須化させる。その中に
は国家に管理・操作されていない真に必要な情報があり、パソコン
に向かいながら正気を保ちつつ、物事をグローバルに考える修練を
積む、という利点があったのは事実だろう。
だが、そこでも「沖縄」は抜け落ちていた。
私は直観した、グローバルな問題、アメリカ~中国~日本~沖縄~
etc の坩堝、それが沖縄である。そしてまた、東京生活という「繁
栄」の裏面の沖縄問題、それに向かわずして何の解決があろうかと。
~「戦後六十年」があたかも憲法九条があったが故に戦争を免れ、
日本が平和を保てた六十年であった、とまとめられてしまうこと
の問題があります。憲法九条をターゲットとして改憲の動きが強
まっていることに対して、憲法九条の意義や大切さを強調するた
めに、この六十年を「平和」な時代であった、と護憲派が強調し
たりする。
~「戦後」日本の経済成長によって生活が向上し、それが多くの
日本人に「平和」を実感させたと思いますが、その足下に踏みつ
けられていたのは何だったのか。そのことを忘れて、あるいは意
識的に無視して「平和」な時代としての「戦後六十年」を語るこ
とは欺瞞に満ちています。「平和憲法」と「日米安保条約」を共
存させ、在日米軍の存在によって「国防」予算を抑え、経済成長
を優先させる。そのような戦後日本のあり方は、沖縄に在日米軍
基地(専用施設)の七五パーセントを集中させること、つまり日
米安保体制の負担と矛盾を沖縄に押しつけることによって可能と
なったのです。(13~14ページ)
この沖縄の常識が相変わらず日本の常識とならないのは、「日本人」
の無関心による。「日本人」が無関心なのは、国家による教育も含
めた情報管理が第一要因だろう。真の情報を隠すことと別の情報を
意図的に流すこと。これによって平和運動などに携わる「意識のあ
る」人たちでさえ沖縄を足下に踏みつけていることに気づかない。
知らないからといって済まされないこともあるのだ。
「青い海青い空」の観光消費イメージ、「ちゅらさん」「ナビーの
恋」に代表される暖かくおおらか(テーゲー?)という紋切り型の
人物造形によって捏造される「癒しの島」。この垂れ流しによって
さらに真に「そこにあること」は隠蔽される。
ヤマトンチューが沖縄を消費していることに対して沖縄から批判の
声が上がっている。勝手なイメージを作り上げブームに乗って移住
してきて好きなところだけつまみ食い、基地問題など暗い現実には
見向きもしない身勝手さにいい加減にしろ、といっている。
自分達が、沖縄大好き、沖縄ファンで、沖縄びいきで、積極的
に沖縄に親しもうとしていることを肯定的にだけ見るのではなく
して、それが一種の暴力性を持っているのだということを反省し
ていかなければ、軋轢は解消しないですよ。基本的に、お互い立
っているスタンスが違うんだ、ということをですね。その違いは
簡単に融和したり、乗り越えたりできないはずなんです。
(171ページ)
私がここ沖縄で日常生活に使う「標準語」は明らかに暴力装置とし
て働いている。communication が discommunication を絶えず誘発
しているという事実。そしてまた、仮に私が「ウチナーグチ講座」
にでも通って、「ウチナーグチ」を完璧にマスターしたとして、そ
れだけで私は認められるなどと期待してはいけない。「簡単に融和
したり、乗り越えたりできない」のだから。その二律背反の中で、
尚ここに立つことの理論と実践。それがこの書に対する答えとして
「あえて」これから続けていくよすがである。
Posted by 24wacky at 09:54│Comments(9)
│今日は一日本を読んで暮らした
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■先月、作家の目取真 俊[めどるま しゅん]さんが『沖縄「戦後」ゼロ年』(NHK出版,生活人新書)をだした。
沖縄に「戦後」はあったのか。
戦争と占領は今も続いている。
という...
沖縄に「戦後」はあったのか。
戦争と占領は今も続いている。
という...
目取真俊,沖縄「戦後」ゼロ年【タカマサのきまぐれ時評】at 2005年10月19日 20:01
この記事へのコメント
先日ブックセンターリブロにいったときのランキング。
この本が8位、小林よしのり『戦争論』が9位、くらいだった。1位は某宗教&政治団体の教祖様。
これが沖縄だ。
目取真俊、怒り続けろ!
この本が8位、小林よしのり『戦争論』が9位、くらいだった。1位は某宗教&政治団体の教祖様。
これが沖縄だ。
目取真俊、怒り続けろ!
Posted by 24wacky3 at 2005年10月10日 10:14
だからといって、ウチナーンチュの「ナイチャー嫌悪」に押されて言わなきゃならないことまで引っ込めるとしたら、それもディスコミュニケーションというものですね。
最近、本当にその辺を深く反省しておりまして、まずちょっとは毒を出さないとダメだな、と思ってます。
全方位的にいい人ぶってると本も買えなくなります(涙)
最近、本当にその辺を深く反省しておりまして、まずちょっとは毒を出さないとダメだな、と思ってます。
全方位的にいい人ぶってると本も買えなくなります(涙)
Posted by Pav at 2005年10月10日 11:09
沖縄がどうのと考える以前に、この国の人々の社会や政治に対する無関心をまずどうにかしなくては。体制的にはこの状態は成功なのかも知れないけど。で、これは若いウチナーンチュについても同じ傾向です。温度差はありますが。
Posted by チャーリー at 2005年10月10日 20:13
>沖縄がどうのと考える以前に、この国の人々の社会や政治に対する無関心をまずどうにかしなくては。
認識が逆です。
社会や政治に対して無関心でいられるのは「平和」だからです。その「平和」は端的にいえば日米安保、沖縄への米軍基地押し付けの元で成り立っているのでしょう。だから沖縄について考え実行することが社会や政治に対する一番の関心事であるべきだ、といっているのです。
>体制的にはこの状態は成功なのかも知れないけど。で、これは若いウチナーンチュについても同じ傾向です。温度差はありますが。
そうですね。関心の高いひともいれば無関心のひともいる。つまり、その程度には沖縄も「平和」である、ということに過ぎません。
認識が逆です。
社会や政治に対して無関心でいられるのは「平和」だからです。その「平和」は端的にいえば日米安保、沖縄への米軍基地押し付けの元で成り立っているのでしょう。だから沖縄について考え実行することが社会や政治に対する一番の関心事であるべきだ、といっているのです。
>体制的にはこの状態は成功なのかも知れないけど。で、これは若いウチナーンチュについても同じ傾向です。温度差はありますが。
そうですね。関心の高いひともいれば無関心のひともいる。つまり、その程度には沖縄も「平和」である、ということに過ぎません。
Posted by 24wacky3 at 2005年10月10日 20:45
>Pavさん
>全方位的にいい人ぶってると本も買えなくなります(涙)
今度本貸すから読んで下さい(涙)。
本を読んでいないで議論しているとカスってるだけなんですよ。
>全方位的にいい人ぶってると本も買えなくなります(涙)
今度本貸すから読んで下さい(涙)。
本を読んでいないで議論しているとカスってるだけなんですよ。
Posted by 24wacky3 at 2005年10月10日 20:55
> 社会や政治に対して無関心でいられるのは「平和」だからです。
この辺の認識に関わると思いますが、
mixiで「中国脅威論」をもって米軍基地の存在は容認し、
その前提の上で基地縮小の交渉をしようと考える人(琉球系の内地在住者)がおられ、
それは絶対おかしいのだけどうまく返せなくて悔しい思いをしているところです。
「中国脅威論」は小林よしのり的な流れなんでしょうか?
この辺の認識に関わると思いますが、
mixiで「中国脅威論」をもって米軍基地の存在は容認し、
その前提の上で基地縮小の交渉をしようと考える人(琉球系の内地在住者)がおられ、
それは絶対おかしいのだけどうまく返せなくて悔しい思いをしているところです。
「中国脅威論」は小林よしのり的な流れなんでしょうか?
Posted by Pav at 2005年10月10日 21:02
まず最初に断っておきますが、ぼくが、
> 社会や政治に対して無関心でいられるのは「平和」だからです。
と書いたのは、「日本人は平和ボケしている、軍備による自衛権を持つのは当然の話だ」と、保守派のひとたちがよくぶっている主張とは違うということ。「平和」と括弧でくくっているのはもちろん皮肉をこめています。
>「中国脅威論」は小林よしのり的な流れなんでしょうか?
小林よしのり氏の場合「中国脅威論」のみならず、反米、反サヨク、敵は何でも良く?、とにかく「愛国心」に基づく「公」の精神で統一せよ、ということを言っている(のでしょうか)。
> 社会や政治に対して無関心でいられるのは「平和」だからです。
と書いたのは、「日本人は平和ボケしている、軍備による自衛権を持つのは当然の話だ」と、保守派のひとたちがよくぶっている主張とは違うということ。「平和」と括弧でくくっているのはもちろん皮肉をこめています。
>「中国脅威論」は小林よしのり的な流れなんでしょうか?
小林よしのり氏の場合「中国脅威論」のみならず、反米、反サヨク、敵は何でも良く?、とにかく「愛国心」に基づく「公」の精神で統一せよ、ということを言っている(のでしょうか)。
Posted by 24wacky3 at 2005年10月10日 21:40
考えなきゃいけない要素がいっぱいあって、
一遍には議論しにくいですね。
ちょっと考えをまとめ直します。
24wacky3 さん、本よろしくお願いします;;;
可能なら小林よしのりも・・・今まで避けてきてました、彼の本は。
あの威勢のいい表紙を見るだけで疲れてしまって・・・
一遍には議論しにくいですね。
ちょっと考えをまとめ直します。
24wacky3 さん、本よろしくお願いします;;;
可能なら小林よしのりも・・・今まで避けてきてました、彼の本は。
あの威勢のいい表紙を見るだけで疲れてしまって・・・
Posted by Pav at 2005年10月10日 22:04
『沖縄「戦後」ゼロ年』はお貸ししましょう。
小林よしのりはカメハハさんから借りました~。
小林よしのりはカメハハさんから借りました~。
Posted by 24wacky3 at 2005年10月10日 22:31
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