てぃーだブログ › 「癒しの島」から「冷やしの島」へ › 今日は一日本を読んで暮らした › 第2章 若者の態度の二種類のねじれ 『可能なる革命』概要 その3

2016年10月19日

第2章 若者の態度の二種類のねじれ 『可能なる革命』概要 その3

可能なる革命

 社会や政治への関心が薄く親密な仲間との関係に閉じこもる若者という通念と、次の社会調査の結果は重なる。衆議院選挙の年齢別の投票率によると、二十代の投票率は1960年代から1980年代にかけては60%前後を上下しているが、2000年を挟む3回の選挙では30%台に激減している。このような極端な減少は他の年齢層ではみられない。

 他方で、古市憲寿による、こういったイメージを覆すデータもある。内閣府の「社会意識に関する世論調査」の中の「社会志向/個人志向」を検出する質問、すなわち、「国や社会のことにもっと目を向けるべき」か「個人生活の充実を重視すべきか」が問われる。その結果は、2012年では20代が社会志向ほぼ50%、個人志向40%と大差なく、他の年齢層と似ている。さらに驚くべきは、同じ年で20代の70・1%が社会に役立ちたいと答えている。これは日本全体の平均67・4%よりも高い数字である。日本全体で数字が高いのは3・11の影響であろうが、それにしてもなぜ20代がより高いのか。

 これらのデータから、日本の若者たちは「社会や政治への志向をもっているのに、選挙へは参加しない」というねじれがあるといえる。そしてそのねじれはもうひとつのねじれ、「不幸や不満を覚えてもよいような社会的困難を自覚しているのに、幸福であると答えてしまう」と似た形式をもっていないだろうか。社会的なものへの志向と私的な親密圏への内閉を肯定することの両立。実際、「今の生活に満足している」と答える若者の率が増加し始めた時期と、若者の「社会貢献意識」が急速に高まった時期はともに1990年代以降ときれいに重なっている。この二種類のねじれの関係に謎を解く鍵がないだろうか。

『可能なる革命』
著者:大澤真幸
発行所:太田出版
発行:2016年10月9日



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