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2017年02月03日

『世界マヌケ反乱の手引書 ふざけた場所の作り方』松本哉

『世界マヌケ反乱の手引書 ふざけた場所の作り方』

「マヌケ」とは何だろう?本書を一読後、マヌケについての思想的意味を問うというマヌケなことを考えてみる。それくらい、本書にはマヌケという言葉が頻出する。しかし、その意味はあいまいである、当然ながら。とりあえず、グローバル資本主義の「敗者」が抵抗の意思を現そうとするその姿勢が、客観的態度からすればマヌケにみえるだろう。その程度のニュアンスで著者は使っているようだ。

 ところが、グローバル資本主義の「敗者」は世界でも日本でも多数を占めるにもかかわらず、その抵抗の姿勢は見えにくい、とりわけ、この日本という国においては。それが「勝者」にとって都合がいいことは言うまでもない。

 マヌケはマヌケにふさわしい場所に集ってこそ、そのマヌケぶりが顕在化する、だからそのための「ふざけた場所」が必要である。ということが、本書では説得力をもって書かれている。

 高円寺の「なんとかBAR」は、そもそも閉店が決まった飲み屋の席で、酔った勢いで飲み屋をやることを引き受けてしまった著者の苦肉の策として読めてしまう。やると言ったものの本業のリサイクルショップの経営はあるし、酔っ払いの相手をするのも嫌だし、飲み屋の経験があるわけでもなし…というマヌケな著者だが、そこで閃くアイデアがすばらしい。「何事も、一人でできないときはみんなでやる」。

 7万円の家賃に対し、声をかけて仲間を14人集め、定額制の場所代を出すという共同経営スタイルがそれだ。ここで大事なことは、高い自由度を維持するということ。定額制にすることで、利害関係に縛られることもなく、個々がやりたいように店を運営することができるのだから。

 本書では、そのように立ち上げられたマヌケな場所の各国の事例が魅力的に紹介され、それらが増殖し、世界同時革命を起こすとする世界最大のマヌケ宣言が囁かれる。しかし、かつての革命と同じようにやっても「悪い支配者たち」に敗北するのは目に見えている。それよりも前に、「革命後の世界を勝手に始めちゃうのがいい」と、著者はミョーに自信ありげ。しかし、それはマヌケな真実である。

『世界マヌケ反乱の手引書 ふざけた場所の作り方』
著者:松本哉
発行所:筑摩書房
発行年月:2016年9月5日




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