2017年02月21日
『山谷 ヤマの男』多田裕美子

東京山谷にある玉姫公園で黒布が垂らされ即席の青空写真館が現れる。そこで男たちはポーズをとり、著者が撮影するフィルムにおさまる。ただただ、浮き出される男たち。1999年からの2年間、それは仕事が激減し「福祉の街」へと相貌を変えていく、かろうじてその前の、日雇い労働者たちが日銭を飲むというシンプルな快楽を得ることができた最後の瞬間でもあった。
撮影者が女だからであろう、男たちはみなカッコをつけている。あるいは女=カメラを見つめている。欲望が翼をつけている。執着と諦念が矛盾なくともにある。それらが刻印されたその場では、男たちはひとりぼっちだけれど平等である。女はなにを感じ、シャッターを切り、現像しただろう。それは本書の文章を越えたどこかにしまってあるにちがいない。
『山谷 ヤマの男』
著者:多田裕美子
発行所:筑摩書房
発行年月:2016年8月25日
Posted by 24wacky at 20:03│Comments(0)
│今日は一日本を読んで暮らした