2006年12月02日
『現代生協改革の展望』⑧
第6章 小栗崇資 『双方向コミュニケーション型生協への模索』
双方向コミュニケーション型生協――ちばコープの挑戦
双方向コミュニケーション型生協
ちば生協では1994年度から、聴く活動を業務の柱に設定し、
「血液が身体全体を循環するように、声がかけめぐる組織をつくる」ことが追求された。
その仕組みは以下の通り。
「ひとことカード」――組合員が日常的に意見を寄せるカード。
「5OO 人アンケート」――商品だけでなく、さまざまな意見を集約。
「コミュニケーション日報」――職員が対話のなかでの組介員の声を報告。
「ひらめきカード」――職員の業務改善提案。
「ポストイット」――店舗での声のメモ。
なかでも、組合員が日常的に声を寄せる「ひとことカード」の枚数は4万通近くなり、
それにたいして3週間以内に回答がなされている。
回答率はほぼ100% 近い状況にある。
当初は苦情が多かったが、次第にカードの内容が要望へと変わり、
より具体的・積極的になってきたという。
「聴きあうとはその人の体験を聴くのであり、すべての人間に関わることなので、必ずといってよいほど共感をともなうのである。それに反し、一方的な“きく ”は対策的活動となり、感動のないつまみぐいとなる」
聴きあうことの根底には、個人個人の願い ( ニーズ ) が実現され、
それが共感となって広がる仕組みがなければならない。
組合員が要望すれば、商品部が商品を見つけてきてただちに商品企画として実現する。組合員一人が要望したからといって一つしか売れないわけではない。一つ一つの商品の囲みには組合員の要望や想いが書かれているが、それを読むと「買ってみようか」という共感や興味が生まれ、予想以上に売れるというのである。多くの組合員は、毎回、このカタログを楽しみにしており、なかにはそこからヒット商品が生まれる。
関係性ニーズとコミュニケーションの重視
ちば生協では、商品事業に即した双方向コミュニケーション以外に、
ヒューマンネットワーク事業や地域づくりに取り組もうとしているのが特徴である。
「人は誰しも、みんなに役立ちたい、ありがとう、すごいねって言われたい」 、「私も楽しみたい」、この思いを人と人のつながりで事業化( 場づくり・関係づくり・情報がゆきかう組織づくり、継続性としての剰余 )していきます。
この事業には、主に子育て応援事業、女性の自立応援事業、
おたがいさま事業、自然体験事業の四つがある。
おたがいさま事業は、育児・家事・介護などのくらしの問題を、組合員同土のボランティアによって支えあうユニークな事業である。
「組合員同士お互い気軽に助け合えるようなシステムを生協で作れないでしょうか」という組合員のひとことカードをきっかけに誕生したという。「家具の移動を手伝ってほしい」「犬の散歩をお願いしたい」「話し相手になってほしい」などのちょっと手助けが欲しい人を応援するサービス事業である。手助けをする人をあらかじめ応援者として登録し、ヒューマンネットワーク事業部のコーディネーターによって手助けを求める利用者との間を仲介する仕組みとなっている。有料ではあるが、無料では心苦しいからという程度の低額料金であり、実際は組合員同士の協同的なボランティア活動であるといってよい。「ありがとう」「おたがいさま」と言える関係をつくることをめざすことから、「おたがいさま」事業と呼ばれることになった。
他の生協は、組合員の活動を階層制的な組織の中に取り込み、
組織や事業に利用しようとする傾向があるが、
ちばコープの場合は、双万向コミュニケーションのなかで元気になった組合員が
勝手に動いているという印象。
事業という名は付けられているが、投入されている資金はわずかであり、
他の生協の福祉事業のように商品事業を圧迫するような事業上の負担
があるわけではない。
ちばコープという生協を母体に組合員が無数の NPO をつくっているようにもみえる。生協としては、商品を中心に組合員を結集し続けることになるが、組合員は、生協の場を利用して自分達の自己実現ニーズやコミュニケーションニーズを実現するために自分達のグループやコミュニティを自由につくっているのである。そうしたネットワーク型の組織を生み出す根底には、すでに何度も述べた双方向コミュニケーションが生き生きと機能していることはいうまでもない。どこからが生協で、どこからが生協でないのか定かでない状態が、ちばコープに生まれているのではないか。それを敢えて、すべてを生協の組織構造や活動体系に囲い込もうとしない点に、ちばコープの見識とセンスのよさを感じずにはおれない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「聴きあう」という地道な、しかし楽しい作業を繰り返し、
その多種多様な個人のニーズを公開すると、それが商品広告になる。
そしてその根底には「共感」があるので一回限りの売りー買いの交換に終わらない。
「聴きあう」の反対が「一方的に喋り続け、他人の意見を聞かない」だろう。
特にオジサンに多い。
「聴きあう」は民主的だ。
ヒューマンネットワーク事業とは、生協(営利事業)内にコミュニティ、
NPO(非営利の集まり)が自発的に発生している状態をいう。
両者の関係は相互作用的でフラットで分散的。
「それを敢えて、すべてを生協の組織構造や活動体系に囲い込もうとしない点」
がポイントか。
通常の営利の立場からすれば、貪欲に囲い込もうとしそうだけど、
それをやったらオシマイ=短期的にはいいが長期的には自壊する、
ということが分かっているからやらないのだろうか。
営利事業がしっかりと中心にあって、でもその戦略の中に「聴きあう」という、
いってみればスローな作業がベースにあり、
そこから自然発生的に様々なコミュニティ事業(非営利ビジネス)が生まれ、
全体を活性化させている。そんなイメージだろうか。
双方向コミュニケーション型生協――ちばコープの挑戦
双方向コミュニケーション型生協
ちば生協では1994年度から、聴く活動を業務の柱に設定し、
「血液が身体全体を循環するように、声がかけめぐる組織をつくる」ことが追求された。
その仕組みは以下の通り。
「ひとことカード」――組合員が日常的に意見を寄せるカード。
「5OO 人アンケート」――商品だけでなく、さまざまな意見を集約。
「コミュニケーション日報」――職員が対話のなかでの組介員の声を報告。
「ひらめきカード」――職員の業務改善提案。
「ポストイット」――店舗での声のメモ。
なかでも、組合員が日常的に声を寄せる「ひとことカード」の枚数は4万通近くなり、
それにたいして3週間以内に回答がなされている。
回答率はほぼ100% 近い状況にある。
当初は苦情が多かったが、次第にカードの内容が要望へと変わり、
より具体的・積極的になってきたという。
「聴きあうとはその人の体験を聴くのであり、すべての人間に関わることなので、必ずといってよいほど共感をともなうのである。それに反し、一方的な“きく ”は対策的活動となり、感動のないつまみぐいとなる」
聴きあうことの根底には、個人個人の願い ( ニーズ ) が実現され、
それが共感となって広がる仕組みがなければならない。
組合員が要望すれば、商品部が商品を見つけてきてただちに商品企画として実現する。組合員一人が要望したからといって一つしか売れないわけではない。一つ一つの商品の囲みには組合員の要望や想いが書かれているが、それを読むと「買ってみようか」という共感や興味が生まれ、予想以上に売れるというのである。多くの組合員は、毎回、このカタログを楽しみにしており、なかにはそこからヒット商品が生まれる。
関係性ニーズとコミュニケーションの重視
ちば生協では、商品事業に即した双方向コミュニケーション以外に、
ヒューマンネットワーク事業や地域づくりに取り組もうとしているのが特徴である。
「人は誰しも、みんなに役立ちたい、ありがとう、すごいねって言われたい」 、「私も楽しみたい」、この思いを人と人のつながりで事業化( 場づくり・関係づくり・情報がゆきかう組織づくり、継続性としての剰余 )していきます。
この事業には、主に子育て応援事業、女性の自立応援事業、
おたがいさま事業、自然体験事業の四つがある。
おたがいさま事業は、育児・家事・介護などのくらしの問題を、組合員同土のボランティアによって支えあうユニークな事業である。
「組合員同士お互い気軽に助け合えるようなシステムを生協で作れないでしょうか」という組合員のひとことカードをきっかけに誕生したという。「家具の移動を手伝ってほしい」「犬の散歩をお願いしたい」「話し相手になってほしい」などのちょっと手助けが欲しい人を応援するサービス事業である。手助けをする人をあらかじめ応援者として登録し、ヒューマンネットワーク事業部のコーディネーターによって手助けを求める利用者との間を仲介する仕組みとなっている。有料ではあるが、無料では心苦しいからという程度の低額料金であり、実際は組合員同士の協同的なボランティア活動であるといってよい。「ありがとう」「おたがいさま」と言える関係をつくることをめざすことから、「おたがいさま」事業と呼ばれることになった。
他の生協は、組合員の活動を階層制的な組織の中に取り込み、
組織や事業に利用しようとする傾向があるが、
ちばコープの場合は、双万向コミュニケーションのなかで元気になった組合員が
勝手に動いているという印象。
事業という名は付けられているが、投入されている資金はわずかであり、
他の生協の福祉事業のように商品事業を圧迫するような事業上の負担
があるわけではない。
ちばコープという生協を母体に組合員が無数の NPO をつくっているようにもみえる。生協としては、商品を中心に組合員を結集し続けることになるが、組合員は、生協の場を利用して自分達の自己実現ニーズやコミュニケーションニーズを実現するために自分達のグループやコミュニティを自由につくっているのである。そうしたネットワーク型の組織を生み出す根底には、すでに何度も述べた双方向コミュニケーションが生き生きと機能していることはいうまでもない。どこからが生協で、どこからが生協でないのか定かでない状態が、ちばコープに生まれているのではないか。それを敢えて、すべてを生協の組織構造や活動体系に囲い込もうとしない点に、ちばコープの見識とセンスのよさを感じずにはおれない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「聴きあう」という地道な、しかし楽しい作業を繰り返し、
その多種多様な個人のニーズを公開すると、それが商品広告になる。
そしてその根底には「共感」があるので一回限りの売りー買いの交換に終わらない。
「聴きあう」の反対が「一方的に喋り続け、他人の意見を聞かない」だろう。
特にオジサンに多い。
「聴きあう」は民主的だ。
ヒューマンネットワーク事業とは、生協(営利事業)内にコミュニティ、
NPO(非営利の集まり)が自発的に発生している状態をいう。
両者の関係は相互作用的でフラットで分散的。
「それを敢えて、すべてを生協の組織構造や活動体系に囲い込もうとしない点」
がポイントか。
通常の営利の立場からすれば、貪欲に囲い込もうとしそうだけど、
それをやったらオシマイ=短期的にはいいが長期的には自壊する、
ということが分かっているからやらないのだろうか。
営利事業がしっかりと中心にあって、でもその戦略の中に「聴きあう」という、
いってみればスローな作業がベースにあり、
そこから自然発生的に様々なコミュニティ事業(非営利ビジネス)が生まれ、
全体を活性化させている。そんなイメージだろうか。
Posted by 24wacky at 19:11│Comments(0)
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