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2008年05月24日

『世界共和国へ』を読むためのメモ その7

3 アジアの専制国家とギリシア・ローマ

国家の諸形態は、支配者と被支配者双方の共同体を見る必要がある。アジア的な国家では、専制的な皇帝と官僚機構・常備軍があることによって、支配者の共同体は消え、中央集権化が可能となる。その一方で、被支配者の共同体はそのまま残る。支配者が共同体全体を上から支配し、かつ共同体とその互酬原理が無傷のまま残っているこのような状態を「東洋的専制国家」という。

その最初の例が、エジプト、メソポタミア、中国で、国家がほとんど完成した形態を示している。農業共同体からの賦役貢納に基づき、保護と服従という「交換」によって周辺国家を支配下におき、範囲を広げて「帝国」になった。そこでは官僚層が支配階級だった。

一方、共同体の互酬原理が残ったことで独自の国家形態を形成したのがギリシアだ。素朴な戦士=農民共同体であるギリシア人は、集権的国家を作ることを妨げた。

ところでアテネの民主主義は西洋に固有の原理として賞賛されるが、近代国家の代議制民主主義とはそもそも異質だ。それは支配者共同体、つまり非市民の奴隷を支配する共同体である。アテネの民主主義は議会にあるのではなく、くじ引きによって決めることにある。そこには誰かが特権的な地位を占めることを極力避けようとする平等主義が貫かれているが、これは共同体の互酬制に基づいている。例えばそれは、北アメリカの先住民族イロコイ族の直接的民主主義にも見出されるが、それは後にアメリカ合衆国建国の模範になった。

ローマはというと、皇帝支配と元老院支配の二重システムが残った。そして異民族を「ローマ市民」として包摂し、領土を拡張し帝国を作った。だが、ギリシア同様奴隷制に基づいていたため、たえず奴隷を獲得する征服戦争を必要とした。ローマ帝国が滅びたのはそのため。


ここでのポイントは2つ。アジア的な国家は、官僚制に基づく中央集権国家と、共同体の互酬原理という2面があり、その2つが共存できたということと、その両者には略取=再分配の交換があったということが1つ目。

2つ目は互酬制と民主主義の関係について。アテネにおいては民主主義=代議制ではなく、くじ引きであり、それは共同体の互酬制に基づいているということ。
2つに共通するのは、互酬制が残り続けるという点だ。

イロコイ族の直接民主主義については、星川淳『魂の民主主義』を柄谷が読んでいることは間違いないだろう。


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