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2009年01月11日

共同体発展論の間違え

「『世界共和国へ』に関するノート」のためのメモ その18

「『世界共和国へ』に関するノート(8) 共同体論」では、共同体についての深い考察が述べられる。『トランスクリティーク』までの柄谷は、共同体をその閉鎖性によって手短に斥けている印象があったが、以降はアソシエーショニズムへと繋ぐ方向性が強く窺える。今回の論はその裏づけとなる「ノート」が開陳されている。

初期のマルクス論文『グルントリセ』では、共同体が原始的形態から発展する段階を、アジア的形態→古典古代的形態→ゲルマン的形態というように書かれている。そして共同体が「発展」するにつれ、私的所有の性格が強くなるとする。これをもとに、大塚久雄はさらに共同体継起的発展を定式化した。

この「継起的発展」を柄谷は疑問視する。農業生活の以前、狩猟採集の時代から、人間は他の共同体に対して、自分たちのテリトリーを定め、武力によって確保し、排他的に占有する共同体としてあった。古典古代的形態とは、ギリシア・ローマの戦士=農民共同体のことである。彼らには、そもそもこのような原初的特長が残存している、というかよく保持している。だから、彼らがアジア的形態から発展、つまり後に来るというのはおかしい。

この「継起的発展」論がもたらす誤謬は、第一に、アジア的農業共同体が最初にあり、それがアジア的国家の基盤となったという考えであり、第二に、その結果、アジア的国家を古い形態と思い込むことである。アジア的国家の官僚制と常備軍というシステムは、古典古代的社会も、ゲルマン的社会も容易に持ち得ないものであるのだから。


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この記事へのコメント
ここは重要ですね。トランスクリティークでは、自身も認めていましたが、抜群であった資本制批判と較べて、国家批判と共同体(ネーション)批判が不十分であったと思います。この論考によって、何故、キャピタルーネーションーステートに対する対抗が同時に行われないとダメなのか、またそれらは結局一つのことであるのか、明晰になってきていると思います。
Posted by ゴロー at 2009年01月11日 15:34
この新たな共同体論は読み応えがありますね。アジア的形態・古典古代的形態・ゲルマン的形態についての基礎的素養を得たくなりました。要するに「世界史」を通読したいのですが、できるだけ分量の多くない、良いテキストはありませんかね~。大学入学時に中公文庫の「世界の歴史」シリーズを購読して以来、まったく読んでいないので。
Posted by 24wacky at 2009年01月11日 17:05
世界史にさほど詳しくない私が言うのも何ですが、朝日が90年代に出版した「地域からの世界史」シリーズは通読目的に良いと思っていました。南アジア=辛島昇、ロシア・ソ連=和田春樹、北米=猿谷要、アフリカ=川田順造など執筆陣もなかなかです。たぶん絶版ですがAmazon古本なら安価ですし・・・。
Posted by 齊藤 at 2009年01月11日 18:49
齊藤さん、さっそくのご推薦ありがとうございます。なかなか良さそうなシリーズですね。せっかくなのですが、Amazon古本は、クレジットカードを持たない主義なもので、利用できないんですよ、残念なことに、トホホ・・・
Posted by 24wacky at 2009年01月11日 20:14
 
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