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2009年07月08日

沖縄アソシエーショニズムへ 27

日本の個別社会、中間勢力が滅ぼされるのは近代以降1990年代まで続く。たとえば、労働組合、部落解放同盟、朝鮮総連、大学(教授会)の自治。これらはメディアのキャンペーンにより封建的、不合理、非効率などと散々非難され、2000年に消滅していた。そこに登場した小泉は中間勢力の残党を「抵抗勢力」と名指しし撲滅した。中間勢力がない社会は専制社会といえる。



日本が専制社会というと首を傾げる人も多いだろう。かりにも国民主権があり、代議制民主主義の国であるならば。柄谷はここで代議制民主主義、すなわち選挙について批判する。

 代議制においては、個々人が投票します。しかし、そのとき、個々人は、具体的な個別社会を捨象した、抽象的な個人としてしか存在しない。各人は密室のように隔離されたところで投票用紙に名を書き込む。個人は他人と出会うことはありません。先ほどの図で言えば、各人は④の状態にあります。
 では、主権者である国民は、どこにいるのか。代議制において、国民は、いわば「支持率」という形でしか存在しません。それは、統計学的に処理される「幽霊」的存在である。たとえば、テレビの業界では視聴率が支配しています。誰がテレビを見ているのかは分からない。ただ、統計学的な数値が支配する。
 国民が主権者であるといっても、どこにも明確な個人は存在しない。視聴率と同様に、正体不明の支持率が存在するだけです。各人は、与えられた候補者や政党から、選びます。しかし、これは政治的な参加だろうか。各人に可能なのは、代表者を選ぶことだけです。モンテスキューは、代議制は貴族政ないし寡頭政だと言いました。それに対して、民主主義の本質は、くじ引きにある、と。つまり、行政における実際上の権利において平等であることが、民主制なのです。
(251ページ)

沖縄アソシエーショニズムへ 27

代議制が貴族政だいうことは、世襲議員が蔓延る今日の政治状況が露骨に現している。彼らは官僚が用意した原稿をただ読むだけだ、それすら読めないリーダーもいるが。国家官僚と資本によって完全にコントロールされている日本は専制国家といわずなんというのだろう。

この専制国家から抜け出るにはどうすれば良いか。柄谷はその問いに対して、代議制以外の政治的行為――例えばデモのようなーーを求めれば良いと答える。代議制だけでは民主主義ではない。アメリカではデモが多いし、選挙運動自体がデモみたいなものである。デモのような行為が民主主義を支えるのだ。デモがあるかぎり、主権者としての国民が存在する。

むろんデモが問題を解決するわけではない。柄谷は講演をこう締め括る。

 日本の社会は先ほど言ったように、専制国家の状態にあります。これに抵抗するにはどうすればいいか。もう古い共同体や個別社会は存在していませんし、それを復活させる必要もありません。新たに創り出すほかないのです。それがいわば「地域自治」ですね。「世界共和国へ」と僕はいいましたが、それは国連のようなものではない。つまり、国家のレベルの連合体ではない。各地の個別的な地域を基礎としたアソシエーションのアソシエーションだ、と思います。だから、そのような個別社会を創り出していくことが、世界共和国を創る上でもっとも大切な第一歩なのです。
(257ページ)

つまり新たな個別社会=「地域自治」=アソシエーションをまずは各々が創り、それらを中央集権化するのではなくさらにフラットにアソシエーションすること。その結果が世界共和国=資本と国家の揚棄へ至るのだと。以上が講演の要約である。

「そりゃデモをするだけで平和が来るなんて / 甘い夢など見ちゃいないさ」と孤高のソウルマンも歌っていたことを思い出した。



次回に続く





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