2019年06月15日
『さよならくちびる』塩田明彦
解散を意識したデュオ“ハルレオ”のハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)と付き人シマ(成田浚)の三人が向かう最後のツアー。秦基博が提供した楽曲「さよならくちびる」は、曲の内容が映画のテーマそのもの。しかもそれを二人の女優が吹き替えなしで歌う。二人の演奏シーンはたくさんある。いずれの演出と演技もが高水準でなければ、映画全体が損なわれていたに違いない。この映画の制作サイドは初めから分かっている冒険に着手し、見事なまでに成功している。
脚本上の三人の主人公の設定がきめ細かく、三人の役者が新鮮に演じきっている。別れを意識した後の尾をひく切なさという感情の発露を、音楽とロードムービーという形式に相関させる塩田明彦のセンスと力量には舌をまくしかない。
車での移動シーンが美しい。それはたんにつなぎのカットでは、まったくない。三人の微妙な関係性からくる緊張感が、通り過ぎていく車窓の風景を刷新していくようで。
間違いなく今年一番の作品。劇場から出た後、余韻に包まれつつ日比谷の街を異人のようにさまよってしまった。
『さよならくちびる』
監督・脚本・原案:塩田明彦
出演:小松菜奈/門脇麦/成田浚
劇場:TOHOシネマズ日比谷
2019年作品
Posted by 24wacky at 08:40│Comments(0)
│いつか観た映画みたいに