2019年12月08日
『半世界』阪本順治
自分が思っていること、感じていることと、自分にとって大切な他者が思っていること、感じていることの差異。言葉を換えれば、贈与とお返しの互酬性が交換様式の共同体と商品交換の差異。
自衛隊員として海外派遣され、一人故郷を離れた瑛介(長谷川博巳)が、なんの前触れもなく地元に戻って来た。炭焼き業を営む紘(稲垣吾郎)は瑛介に何かがあって心の傷を抱えていることを察知し、声をかける。瑛介はいう。お前が知っているのは社会にすぎない。俺は世界を知っている、と。難しいこと言うなよ、と紘が返す言葉がやさしく、遣る瀬無い。
紘、瑛介と小学、中学と仲の良い同級生だった光彦(渋川清彦)は三人の関係性が平等な正三角形だというのが口ぐせ。映画の光の当て方は、だが、紘、瑛介に比べ控えめである。正三角形が脆いことを一番知っているのが光彦であり、だからこそ紘、瑛介の対立構造を微妙に按配できる。
渋川清彦目当てで見たのだけれども、これまで役者としての姿を見たことがなかった稲垣吾郎の表情がよく(阪本順治がいいところを拾っている)、アメリカンニューシネマのアンチヒーローのような長谷川博巳もこれまた素晴らしい。ということは、渋川清彦が良いということなのだろう。あのヘラヘラがたまらない。
『半世界』
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎/長谷川博巳/渋川清彦/池脇千鶴/小野武彦/石橋蓮司/杉田雷麟
劇場:キネカ大森
2019年作品
2018/01/26
あっけなく夫(寺尾聡)に先立たれた平凡な主婦(風吹ジュン)は、夫に不倫相手(三田佳子)がいたことを知る。それからの再生のドラマ。その道行きの自由な展開に先が読めずドキドキする。なにしろ最後は唐突に映写技師になって『ひまわり』を映写しているところがエンディングなのだから。これは風吹ジュンのため…
Posted by 24wacky at 09:34│Comments(0)
│いつか観た映画みたいに