2019年06月28日
『旅の終わり世界の始まり』黒沢清
ウズベキスタンへのロケ、登場人物が撮影クルーという設定、役者たちが中央に配置しカメラに向かってポーズをとる宣伝写真がすでに映画の「出来高」とは別の何かを予言してしまっている。
それぞれの役者たちが「旅」先のようなロケ地で完璧な職業人と化して映っている。演技によって撮影クルーのリアルさが現されているのに「旅」をしているようだ、なんておかしな話だが、それがこの映画の魔力にちがいない。
「自分探しの主人公」というあられもない設定を前田敦子に強いた黒沢清は何がしたいのだろう?と、本来は問うことになるはずの脚本なのだが、それが瑕疵に見えないから不思議だ。異国で途方に暮れるかなりイタい女の子が主人公の『Seventh Code』の反復なのだが、黒澤作品のこの路線といえばもはや前田敦子しかありえないという倒錯した考えが浮かび、だとすればそれはすでに黒沢の術中にハマってしまったのだからとあきらめるしかないのか。
それはそうと、柄谷行人ー津島佑子ー黒沢清という遊動論サークルが誕生したことに驚き慄きさんざめくしかない。
『旅の終わり世界の始まり』
監督・脚本:黒沢清
出演:前田敦子/染谷将太/加瀬亮/柄本時生/アディズ・ラジャボフ
劇場:テアトル新宿
2019年作品
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Posted by 24wacky at 10:28│Comments(0)
│いつか観た映画みたいに