2007年03月12日

『麦の穂をゆらす風』

『麦の穂をゆらす風』


桜坂劇場で『麦の穂をゆらす風』を観た。


社会の底辺に生きる人々を撮り続けてきたケン・ローチ。
好きな作家の一人だが、今作はアイルランド独立の歴史
という大きなテーマに取り組んだということで、
期待と不安が半々だったが、
カンヌ・パルムドール受賞に恥じない素晴らしい出来だった。

以下のピーター・バラカンのコメントが的を射ている。


「テロ」と呼ばれる暴力行為は、残念ながら我々が生きるこの時代の一つの象徴になっています。
しかし、「テロ」を非難するばかりで、それがなぜ起きるかを客観的に理解しようとする人は意外に少ない気がします。
この映画でケン・ローチはまさにそのことをテーマにしていると思います。
長年のイギリス支配から独立しようとするアイルランドのことを具体的に描いてはいますが、民族の戦いとそれが全員にもたらす悲劇という普遍的な様子が衝撃的に伝わってきます。
イギリス政府が過去にアイルランドに対していかにひどいことをしてきたかという歴史について、最近まで何も知らなかった自分も恥ずかしくなってしまいました。でも、「イギリス」と「アイルランド」の代りに、「加害者」と「被害者」の名前を入れ替えれば似たような状況が世界の様々なところでも存在します。
カンヌ映画祭でこの映画がパルムドールを受賞したのも、審査員たちがそのように感じたからに違いありません。

―― ピーター・バラカンさん(ブロードキャスター)



「似たような状況」は、無論ここ沖縄に当て嵌まる。

国家の植民地政策に対してナショナリズムの高揚が結果するものは?
「独立」するとは、どんな状態を指していうのか?

政治=文化アイデンティティの危うさとは?

リアルで寒々しいケン・ローチの映像はそれらを明確に刻んでいる。


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劇場では複数の知人に出くわした。

『与那国カウボーイズ』の島監督(まいどお馴染み)。
テオ・アンゲロプロス『霧の中の風景』に続いてのタフな鑑賞。
「西日本での上映を考えているが相談に乗ってくれないか?」
ということでしばし立ち話。

「気候アクションセンターおきなわ」のOさん。
先週末は『ダーウィンの悪夢』での田中優さんトークショーを主催する側だったが、
当日は結局映画を観られなかったので、ようやく今日観に来たとのこと。

沖縄大学のY君。
『ダーウィンの悪夢』を観た後でバッタリ。
「昨日卒業式だったんですよ」。
「そうだよね。今後はどうするの?」
などとしばし立ち話。
Y君はこのブログにも何度か登場している通り、
多方面の活躍が目立つ、将来が有望な若者だ。
卒業後も沖縄で生活するらしいので頼もしい限り。



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