2009年05月24日

『ラブホテル』

桜坂劇場で『ラブホテル』を観る。「桜坂ロマン座セレクション」と名づけられたレイトショーの1本で、女性専用シートを設け、日活ロマンポルノの名作を、幅広く観てもらいたいというねらいは良い。実際の客席は女性専用シートがほぼ空席だった。定着するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

『ラブホテル』相米慎二監督の同作品は見逃していたので良い機会となった。『台風クラブ』と同じ1985年の制作である。方や当時のディレクターズ・カンパニーからすれば巨額の制作費を超過させながら力技で押し通した青春映画、方や低予算を義務づけられた成人映画という枠内で描かれた男女の性愛。どちらでも突発的な情意が極めて映画的である。

後半の相米は巨匠と目されるほど重心が低い素振りを見せたが、『ラブホテル』では、彼がぶきっちょな映画青年であったことを露出している。そのアドレッセンスと照明の熊谷秀夫ら老練な映画屋たちが現場で幸福に符合してしまったのだ。

石井隆「天使のはらわた」シリーズの村木と名美を、それぞれ寺田農、速水典子が「体当たり」で演じている。「体当たり」は突発的な情意に欠かせないのだ。退色ぎみのラブホテル、カーラジオから流れる山口百恵の『海へ』に誘われ2人が向かう夜の横浜埠頭、孤独な男の安アパートと雨降る階段、もんたよしのりが唄う感傷過多のバラード。過酷な制作環境でも観るものを熱くさせるシャシンを撮ることは可能なのだ。



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この記事へのコメント
日活ロマンポルノですか。寺田農はよく濡れ場を披露する男優ですよね。
Posted by 台湾人 at 2011年08月14日 17:26
 
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