2009年12月08日
橋下知事発言をめぐるメディアの問題
橋下大阪府知事が普天間受け入れについて「議論は拒否しない」と発言したことについては、唐突な印象を拭えなかった。沖縄の基地負担を日本全体でシェアしようというその言葉が、本当に言葉通りのものであれば高く評価すべきであるが、これまで彼が沖縄の問題についてコミットしたところを見たことがないし、どうせなにか裏がある上でのパフォーマンスではないかと警戒していた。
その真意はともかく、この発言の裏に、メジャーメディアの根深い問題が潜在していることが分かった。実はこのような大きな発言を、橋下知事が以前二度にわたってしていたにもかかわらず、メディアは黙殺した。そのことを疑問に思い、大阪での囲み取材に‘突撃’参加したフリージャーナリスト岩上安身氏のYouTube投稿以降、堰を切ったように一斉報道を始めたメジャーメディアの豹変振りを次の記事が伝えている。
大手マスコミ黙殺した橋下発言 「普天間関西へ」浮上の舞台裏
J-CASTニュース12月7日付
この異様な横並び全体主義に対し、岩上氏は「まるで便秘からいきなり下痢になったようで、気持ちが悪い」と評し、記者クラブ制度の悪しき慣行を批判している。その批判はその通りだろう。記者クラブ制度については、民主党政権に変わって少なからず(メジャーメディア以外では)問題提起がされていて、これ自体重要な問題である。
その制度としての問題は後日に回すとして、今回注意したいのは、これまでであれば橋下知事の行くところ文字通りぶら下がり、その一挙手一投足を過剰に伝えようとしてきたメジャーメディアが、どうしてこの大きな発言を二度にわたって黙殺しようとしたのか、という疑問である。
それは、かれらの中に、日米関係の見直しを主張する鳩山政権に対し、アメリカは怒っている、このままでは日米同盟が危うい、それがどれほど恐ろしいことか分かっているのか。そのように危険な鳩山政権を批判し、「アメリカが求める」普天間「移設」現行案を早く認めさせろという(半ば無意識レベルの)政治的意図があるからだと思えてならない。要するに、日米安保を国内議論にしたくないのだ。これまで通り米軍基地を沖縄に押し付け続け、「平和」を享受し続けたいという虫のいい話だ。
その意識・無意識レベルを操作しているのが、長年月自民党政権を陰で操ってきた(外務省)官僚である。メジャーメディアの紙面の半分以上は、官僚が配布したペーパーの垂れ流し情報が占める。このペーパーを横並びで入手した上で、他社よりそれ以上の情報を得ようと、さらに官僚に擦り寄るのが「記者」の正体だ。勤勉な日本人の圧倒的多数は、毎日これらの「記事」を読み、「常識」を得ている。
これに対し、岩上氏のいわばゲリラ的な取材は、対象により近い情報を私たちに与えてくれる。
基地負担をシェアするという橋下知事、そしてそれを評価している岩上氏の態度は、本土の人間の「入り口論」として、倫理的にそうあるべきである。その前提に立って、軍事力とは?あるいは真の安全保障とは?という議論を、日本全体ですべきで、その具体的議論が、では日米安保をどうするかということになるはず。
一方、橋下知事には「弱者」である沖縄に対してファターナルなものを感じる。大田中将自決に際しての電文を繰り返し強調するあたりに、ファナティックなナショナリズムをちらつかせる本音もうかがえる。要するに、「思い」のあるかつての自民党「沖縄族」議員たちと同様だ。沖縄の経済活性化にカジノの提案はいわずもがなである。
ところで岩上氏自身のHPコンテンツ「ニュースのトリセツ」には、国内外の幅広い取材活動をしてきた彼の、沖縄の基地問題についての問題意識が書かれている。
極めてまっとうな指摘である。これこそ、このところの「普天間移設問題」狂奔劇を繰り広げる、ブザマで醜悪極まりない我が国のメジャーメディアへの真摯な批判であり、沖縄では当たり前の常識であるべきである。それが常識でなくなりつつあることを、植民地支配を被った者の自己批判として、女たちは鋭く警鐘を鳴らしている。
⇒グアム移転ではなく普天間閉鎖を
岩上氏の活動に大いに敬意を表したい。たった一人のジャーナリストのフットワークの軽い活動が、大メディアの足もとを掬い、その罪を露にしたのだから(さらに亀井大臣へのインタビューなども興味深い)。
それがさっそく影響を与えたのか、本日の沖縄タイムの驚くべきトップ記事を読むと、橋下発言が中央で真剣に受け留められているようだ。むろん、これも批判すべきである。
普天間移設 政府、シュワブ陸上検討/官邸と与党間で調整
関空・嘉手納にも分散
大手マスコミ黙殺した橋下発言 「普天間関西へ」浮上の舞台裏
J-CASTニュース12月7日付
この異様な横並び全体主義に対し、岩上氏は「まるで便秘からいきなり下痢になったようで、気持ちが悪い」と評し、記者クラブ制度の悪しき慣行を批判している。その批判はその通りだろう。記者クラブ制度については、民主党政権に変わって少なからず(メジャーメディア以外では)問題提起がされていて、これ自体重要な問題である。
その制度としての問題は後日に回すとして、今回注意したいのは、これまでであれば橋下知事の行くところ文字通りぶら下がり、その一挙手一投足を過剰に伝えようとしてきたメジャーメディアが、どうしてこの大きな発言を二度にわたって黙殺しようとしたのか、という疑問である。
それは、かれらの中に、日米関係の見直しを主張する鳩山政権に対し、アメリカは怒っている、このままでは日米同盟が危うい、それがどれほど恐ろしいことか分かっているのか。そのように危険な鳩山政権を批判し、「アメリカが求める」普天間「移設」現行案を早く認めさせろという(半ば無意識レベルの)政治的意図があるからだと思えてならない。要するに、日米安保を国内議論にしたくないのだ。これまで通り米軍基地を沖縄に押し付け続け、「平和」を享受し続けたいという虫のいい話だ。
その意識・無意識レベルを操作しているのが、長年月自民党政権を陰で操ってきた(外務省)官僚である。メジャーメディアの紙面の半分以上は、官僚が配布したペーパーの垂れ流し情報が占める。このペーパーを横並びで入手した上で、他社よりそれ以上の情報を得ようと、さらに官僚に擦り寄るのが「記者」の正体だ。勤勉な日本人の圧倒的多数は、毎日これらの「記事」を読み、「常識」を得ている。
これに対し、岩上氏のいわばゲリラ的な取材は、対象により近い情報を私たちに与えてくれる。
基地負担をシェアするという橋下知事、そしてそれを評価している岩上氏の態度は、本土の人間の「入り口論」として、倫理的にそうあるべきである。その前提に立って、軍事力とは?あるいは真の安全保障とは?という議論を、日本全体ですべきで、その具体的議論が、では日米安保をどうするかということになるはず。
一方、橋下知事には「弱者」である沖縄に対してファターナルなものを感じる。大田中将自決に際しての電文を繰り返し強調するあたりに、ファナティックなナショナリズムをちらつかせる本音もうかがえる。要するに、「思い」のあるかつての自民党「沖縄族」議員たちと同様だ。沖縄の経済活性化にカジノの提案はいわずもがなである。
ところで岩上氏自身のHPコンテンツ「ニュースのトリセツ」には、国内外の幅広い取材活動をしてきた彼の、沖縄の基地問題についての問題意識が書かれている。
重要な問題は、本来は、時期ではないはずだ。また、普天間飛行場返還後の代替施設がどこになるか、ではないはずである。
もっとも重要な問題は、いかにして沖縄の負担を軽減するか、という一点である。この問題の解決の成否は、この一点にかかっているといっても過言ではない。
極めてまっとうな指摘である。これこそ、このところの「普天間移設問題」狂奔劇を繰り広げる、ブザマで醜悪極まりない我が国のメジャーメディアへの真摯な批判であり、沖縄では当たり前の常識であるべきである。それが常識でなくなりつつあることを、植民地支配を被った者の自己批判として、女たちは鋭く警鐘を鳴らしている。
⇒グアム移転ではなく普天間閉鎖を
岩上氏の活動に大いに敬意を表したい。たった一人のジャーナリストのフットワークの軽い活動が、大メディアの足もとを掬い、その罪を露にしたのだから(さらに亀井大臣へのインタビューなども興味深い)。
それがさっそく影響を与えたのか、本日の沖縄タイムの驚くべきトップ記事を読むと、橋下発言が中央で真剣に受け留められているようだ。むろん、これも批判すべきである。
普天間移設 政府、シュワブ陸上検討/官邸と与党間で調整
関空・嘉手納にも分散
Posted by 24wacky at 16:26│Comments(2)
│NEWSを知りたい
この記事へのコメント
おはようございます。
どうもTBがうまくいってくれないようです。
もうご存じだと思いますが、
東京新聞のスクープを貼らしていただきます。
http://blog.goo.ne.jp/naha_2006/e/07a3644d0327eea57441c89cc4c8c45c
多くの人に知ってほしいです。
どうもTBがうまくいってくれないようです。
もうご存じだと思いますが、
東京新聞のスクープを貼らしていただきます。
http://blog.goo.ne.jp/naha_2006/e/07a3644d0327eea57441c89cc4c8c45c
多くの人に知ってほしいです。
Posted by ブーゲンビリア at 2009年12月10日 11:10
>ブーゲンビリアさん
そちらの対応もいろいろあることと察します。スクープ内容について、続報など詳しいことがお分かりになったら、また教えて下さい。
そちらの対応もいろいろあることと察します。スクープ内容について、続報など詳しいことがお分かりになったら、また教えて下さい。
Posted by 24wacky at 2009年12月10日 21:38