2017年01月26日
『魅力あふれる認知症カフェの始め方・続け方』
認知症カフェとは、認知症当事者や家族が気軽にお茶を飲みながら、不安や悩みを打ち明けることができる場所として、近年ひそかに注目を集めている。厚生労働省による「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」(2015年)が自治体に開設を促したことで、以降増加傾向にある。本書をはじめ、ガイドブックも数種類発行されているが、さて、その実態はどうだろうか?
認知症カフェの3要素として、〈楽しむ〉〈相談する〉〈学ぶ〉が挙げられる。〈楽しむ〉はリラックスして楽しめ、”ちょっとオシャレな場”を演出することが重要である。だからカフェなのだ。〈相談する〉では、ケアマネ、専門医などが参加し、個別の相談に応じる体制をとる。〈学ぶ〉では、社会全体の認識が追いついていない認知症について、勉強会やセミナーを開くことで、スタッフも含めて学んでいく。〈相談する〉〈学ぶ〉については、行政やNPOなどが行ってきているが、敷居が高いイメージがどうしてもつきまとう。それを当事者レベルまで下げるという意図で、カフェという楽しい非日常の場がふさわしいというのは納得できる。
本書では、開設・運営の手引きが具体的に書かれていてわかりやすい。自治体からの助成金も増えているという。ただし、対象が開設資金のみであったり、運営助成金であっても期間が限られているケースがほとんどである。いすれにせよ、まずはあなたが開く予定の自治体の情報をチェックしてみるべきだろう。
認知症カフェの実態がわかるのが、Part 4 の事例紹介である。
地域包括支援センターが主催する事例の「オレンジカフェ みんなの家・川越新宿」(埼玉県川越市)は、グループホームという施設が近隣住民に認知されたことが利点だという。しかし、そのメニューをみると、体操や唱歌の合唱など、デイサービスなど福祉系施設のレクと同類のようで、差別化は必要ではないだろうか。
NPO法人が主催する事例の「認知症予防カフェ おれんじ」(東京都小金井市)は、その成立過程が興味深い。認知症カフェ開設を前提として、「介護者サポーター講座」を開き、カフェに協力してくれる市民を集めた。講座終了後も議論を重ねてカフェ開設に至ったという。
認知症の家族会が主催する事例の「オレンンジサロン 石蔵カフェ」(栃木県宇都宮市)は、認知症カフェという言葉が生まれる前からすでにそれを意識せずに実践していた、画期的な交流の場である。興味深いのがその誕生のエピソード。60歳代半ばで若年性認知症となった男性の「働きたい。人の役に立ちたい」という切実な訴えがあった。これに対し、プロデューサー的な存在の女性は、最初に農家の手伝いを紹介したが、すでに出来上がった場で働くのは大変だったことがわかり、男性をマスターにカフェを開くことを思いついたという。支援者の目線から当事者の主体性へシフトすることで導き出されたアイデアだからこそ、よい結果をもたらしたといえる。地元産の大谷石作りの蔵を改修した50席のフロアは、開店直後にすべて満席になるという。メニューにも工夫がみられる。ウェルカムドリンクは無料とし、地域住民や会員がつくった野菜やケーキは格安料金を設定することで、”買う楽しみ”をプラスしている。
最後に、医療機関が主催する事例の「しばさきオレンジカフェ」(東京都調布市)では、医療のみならず、社会参加できなくなった人のサポートの必要性から、カフェに行き着いた。主催する西田医師は、地域のシャッター商店街の一角などを借りて常設の認知症カフェをつくるという夢を描いている。
ちなみにこれら事例の年間運営資金は、5万円から20万円となっている。運営主体のボランティアに過重な負担を強いているのが現状であり、継続的な支援体制を国に求めたい。
『魅力あふれる認知症カフェの始め方・続け方』
著者:浅岡雅子
発行所:翔泳社
発行年月:2015年10月16日
2016/11/20
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Posted by 24wacky at 19:31│Comments(0)
│今日は一日本を読んで暮らした