「癒しの島」から「冷やしの島」へ

　若手監督に短編を撮らせるという企画。タイトルにあるように、冬という季節感を表現、若い女性が仕事を辞め実家に帰り、自分を見つめるというモチーフ。

　「ファの豆腐」は東京の下町の豆腐屋が舞台。父親役の塩見三省が淡々としたそぶりの中で、新しい豆腐作りを娘に誓うときに見せるはにかんだ表情がよい。

　「冬の日」は、雪国の閉館する写真館を舞台に、カメラマンの仕事を辞め東京から戻ってきた娘役の長澤まさみと、元恋人の母親役の風吹ジュンの「再会」からドラマが始まる。写真を撮ってほしいという母親の依頼に対し、仕事をすでに辞める決意をした娘はいったん断るが、撮ってほしい理由が、胃癌と診断されてのことだとわかり、「撮らせてください」と前を向く。短い尺の制約もあり説明的なセリフにならざるを得ないが、風吹ジュンのアップと感情の発露が圧倒する。

　「地元」への「帰還」と「再生」の物語。両作品ともシナリオをもう一捻りすれば、切れ味鋭い短編となったのでは。それを想像するのは愉しい。

『白い息』
監督：「ファの豆腐」久万真路/「冬の日」黒崎 博
出演：「ファの豆腐」菊池亜希子、塩見三省「冬の日」長澤まさみ、風吹ジュン
Gyao配信期間
2017年1月18日～2017年1月31日