2006年08月22日
我が青春に悔いなし

黒澤映画には珍しい、女性を主人公にした作品。1933年の京大事件と第2次大戦中に発覚したゾルゲ・スパイ事件、この現実に起こったふたつの事件に想を得て、帝国主義に勇敢に立ち向かうヒロイン(原節子)の生きざまを描く。
原節子が演じるのは京大事件で大学を追放された滝川教授をモデルにした、八木原教授の娘・幸枝。幸枝は戦争中に敵のスパイとして逮捕され、獄死するジャーナリスト・野毛(モデルはゾルゲ事件の尾崎秀実)と愛し合い結婚。彼の死後も信念をもって逞しく生き抜いていく。そのヒロイン像は「日本が新しく生まれ変わるためには、女性も自我を強くもたなければ」という黒澤監督の考えを反映したものだった。当時の若者たちの共感を得たこの生き方は、いま見てもまぶしい美しさを放っている。
黒澤 明にとっては、この作品がいわゆる戦後第一作。大戦の渦中で思い通りの作品を撮れなかった黒澤は、初めて自分のメッセージを作中に込めた。ラスト20分の陰影に富んだ力感あふれる映像は、この作品に賭けた彼の執念を感じさせる。
製作●松崎啓次 脚本●久板栄二郎 撮影●中井朝一 美術●北川恵司 音楽●服部 正 録音●鈴木 勇 監督補佐●堀川弘通 東宝作品
出演●原 節子/藤田 進/大河内傳次郎/杉村春子/三好栄子/河野秋武/高堂国典/志村 喬/深見泰三 ほか
(以上、黒澤明東宝DVDオフィシャルサイトより)
DVDレンタルで鑑賞。
数ある黒澤作品からこういう内容のものを選ぶのは、
どうしてもきな臭い現在への反応として意識されているのだろう、
とパッケージを手にしてから気付かされた。
「若い」クロサワの、海外サイレント映画からの影響と思われる
映像テクニックの披瀝なども青臭く、微笑ましい。
同時に、定番となった走るフルショットのカットバックが
既に効果的に使われていて興味深い。
新しい価値観、エネルギーの溢れる主人公と対照的に描かれる
閉鎖的な農村共同体も後の「七人の侍」で再現される。
後半、「私は野毛の妻です」と覚悟を決め、因習的な共同体の村八分に
さらされながら、狂気のごとく百姓仕事に没頭する「ガングロ」の原節子は必見。
Posted by 24wacky at 10:40│Comments(0)
│いつか観た映画みたいに
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