「癒しの島」から「冷やしの島」へ

アメリカ政界の中枢には、あえてアメリカ単独型から多極型に世界体制を転換させるために、世界の悪者としてのアメリカを演じている「隠れ多極主義者」がいるという田中氏の持論は、９・１１同時多発テロ以降の世界情勢を見る中でこれまで一貫して主張されてきた。それには一定の説得力がある。

今回の記事は、その隠れ多極主義者論を、先日ゲーツ米国防長官が民主党政権にぶつけた「現行案の辺野古以外はダメだー」恫喝と、それに対する沖縄側からの反発の動きに応用させている。簡単に同意も拒否も出来ないが、多少のコメントをしてみる。

これを読んで改めて漠然と感じていた点を確認できた。それは、どうして民主党は、そもそも普天間飛行場を「少なくても県外・国外へ移設」と主張したのかという疑問である。これに対する納得のいく説を見聞したことがない。「自民党が長年手をこまねいていた問題を一挙に解決することによって実績を作ることになるから」というのもいえなくはない。あるいは「『対等な日米同盟』『対米従属から多極的な外交へ（その結果の東アジア共同体）』という鳩山首相の理想の政策だから」というのも理屈にあってはいる。しかしながら、それだけの理由で手をつけるにしてはあまりにもリスクが大き過ぎないか（私は鳩山の「友愛」論文を初めて読んだ時、田中宇の「世界は多極化へ」という論をすぐ思い浮かべた）。

その点で注目したいのが民主党沖縄ビジョン。沖縄の有識者１７人を集めて作成したらしいが、どんなメンバーがどのように議論してできたものなのか、どなたかご存知の方がいらしたらご教示いただきたい。内容からして昌吉先生の顔が浮かぶ程度なので。

ところで、「対米従属プロパガンダ機関と化している日本マスコミの主軸」という表現は見事だ。「主軸」でない沖縄マスコミがその例外であることは誇るべきである。「ゲーツや米政府は『辺野古はダメです』という沖縄の民意をよく知っている」とするなら、知らないのは日本マスコミの主軸だけだと皮肉をいってやりたい。

そのマスコミによって鳩山政権は批判に晒され、特に沖縄から反米傾向が強まり、日本全体に飛び火して「覚醒」させられるという推論には留保を要する。今回の一件で沖縄世論が反米傾向を強めていると田中氏はみているが、沖縄の思い（あえてこう表現する）は、たんに反米といいきってしまって良いはずがない。政権について間もなく公約を反故にする民主党政権への不審があり、「県外がベストだが…」が枕詞の不甲斐ないリーダーに対する苛立ちがあり、そしてなにより歴史的に植民地的差別意識から放置・無関心・押し付けを続けてきた日本（人）への憤怒があるのだ。それを「９９年の調査では賛成と反対が約４５％で拮抗していた」などと、データのみで簡単に判断してもらっては困る。

日本のマスコミの主軸によって煽動されターゲットにされるのは、鳩山政権よりも沖縄に対してではないか、とつい悪い予感をしてしまう。

と、ここまで書いている途中で、今日の朝刊トップ記事。

神奈川知事　辺野古案推す　「普天間」移設
再編遅れを懸念/仲井真氏「県内やむなし」

私はこのブログにおいて、沖縄の問題について書く時に、これまで怒りの感情を露骨に表現するようなことは極力避けてきた。それはどうしてかといえば、沖縄の人々の怒りに比べれば私の怒りなど比べるべくもないわけで、沖縄の人びとからみれば上滑りな、軽薄なものだと捉えられるに違いないと思うからだった。

今回のワシントンにおける神奈川県知事の発言と、同席しながらそれに抗議するどころか、開き直って「容認」する沖縄イカレポンチ県知事に対しては、態度変更させてもらう。前者にはクサレ日本人の本音が顕れているし、後者には沖縄県のリーダーとして最悪な男を世界に晒してしまった究極の恥の意識でいっぱいだ。このツーショットを一言でいえば、植民地政策の完成形ということになる。薩摩侵略から400年、琉球処分から130年、われわれは汚辱の歴史の目撃者となってしまった。