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2009年11月20日

官僚をどう捉えるか

田中宇の国際ニュース解説沖縄論続編、つまり先日の県民大会参加後の記事が掲載された。
日本の官僚支配と沖縄米軍

前半は日米同盟について巨視的な観点から論じ、後半はその概観から導き出された独自の見解を述べている。

まず初めに、普天間飛行場ができた経緯を振り返り、どうして住宅密集地が周りを取り囲んでいるのかというそもそも論を確認し、あまりにも危険だから閉鎖した方が良いという認識を、70年代から日米政府が持っていたことを挙げる。それが現在までなぜ恒久化しているのか?その答えを田中氏は思いやり予算に求める。つまり、日本政府が米軍を買収して「お願いですからこれからも居てください」と頼み、米軍は居心地が良いから出ていかないのだと。

また「地政学上の理由から、基地は沖縄になければならない」論に対しては、海兵隊は沖縄に常駐する軍事的必然性はないし、中国は日米の戦略的パートナーであるという理由から完全に否定する。

沖縄から米軍基地がなくならないのは、米軍の軍事的・地政学的理由からではなく、日本政府が頼み込んでいるからだというのは、このブログの読者であればもはや常識であろう。これをいかに説得力を持たせて書くかということに関して、田中氏の記事は情報が圧縮されていながら極めて分かり易い。

さて、それよりも注目すべきは後半の論理展開である。日本政府がどうしてお願いしてまで米軍基地にいてほしいのか、と田中氏は問いをたてる。

 私が見るところ、日本政府が米軍を買収してまで駐留し続けてほしいと思ったのは、日本の防衛という戦略的な理由からではない(急襲部隊である海兵隊は日本の防衛に役立っていない)。米国から意地悪されるのが怖かったからでもない(フィリピンの例を見よ)。

 日本政府が米軍を買収していた理由は、実は、日米関係に関わる話ですらなくて、日本国内の政治関係に基づく話である。日本の官僚機構が、日本を支配するための戦略として「日本は対米従属を続けねばならない」と人々に思わせ、そのための象徴として、日本国内(沖縄)に米軍基地が必要だったのである。


これに対して些細な反論をしてみる。確かに海兵隊は防衛部隊ではないにしても、対外的にみれば同盟で結ばれたアメリカの軍事力はそれだけで「傘」になるだろうし、「意地悪される」という表現が相応しいと思えないほど、日本にとって、というより世界のどの国にとっても、やはり大国アメリカは恐いに違いないだろう。また、アメリカ多極主義者による陰謀論についても、国際政治に疎い私には簡単に肯定も否定もできない。

しかし、それよりも注目すべきは、国際情勢の専門家である田中氏が、国内の官僚制(官僚支配)の権力性に着目している点である。

官僚とはふだん一般の生活者にはよく見えない存在だ。むろん、一人一人の官僚は、機会があればその素性を窺い知ることはできる。だが私のいっていることはそういうことではなく、官僚制(官僚機構)が寄って立つ地盤のようなものがなにかということである。

柄谷行人は、国家の自立性は他の国家に対してあることにおいてのみ知ることができるのであり、その自立性を示すのが、軍・官僚機構であるといった。国家というものがどういうものか、それを国の中でだけ見ようとしても駄目で、他の国家とのつきあいによって国家は国家となる。その正体を端的に現すのが、軍(戦争)と官僚機構であると。
『世界共和国へ』を読むためのメモ その17

ところで、官僚が日本を支配するためにアメリカからの従属支配を利用しているとしても、その官僚自身がアメリカから従属支配されている、つまり利用されているといえないか。支配の二重構造という見方だ。

ただ、そのような視点は分かり易い。「官僚は日本を支配するため」というと、誰かしら主体のはっきりした人物が陰に隠れて悪巧みをしているようだが(実際悪巧みをしているに違いないが)、実はそのことが国益になるからという「純粋な」そして「他意の無い」意志として、没主体的に発動しているということはいえないだろうか?もちろん、それを実行する手段において、各位相の代表者たちによる手練手管を行使しての悪巧みはなされるであろうが、それはあくまで手段の話だ。それのみではどうしてそのような「悪事」をするのかという問いへの答えは見出されない。

田中氏のいう通り、日本の官僚たちが対米従属を国民に謀ることで支配しようとしているならば、その官僚たちに対して「お前ら、それでも日本人か?」と怒鳴りたくなる。だが、よく考えればその怒りはおかしい。彼らが国益を考えて実行しているに過ぎないのだとしたら。問題は、その国益とは国民の利益ではなく、国家の利益であるということになる。


混乱したままの雑文を載せてしまった。
読んでくれた方、ごめんなさい。


タグ :田中宇

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岩上安身さんオフ会(2010-07-11 11:20)


この記事へのコメント
混乱とは言われますが、主旨はよくわかります。「中国」「米国」といった表現で、あたかもひとつの意思を持った主体であるかのように扱うことが馬鹿げたことであるのと同様に、「官僚」というひと括りは危険だと思っています。陰謀論とまではいかぬとしても、国内の仮想敵国と化してしまうのではないかと思うのです。かといって、これらを構造論にしてしまうと、主体がどこかに逃げてしまいます。
・・・というわけで取りとめがありませんが、「結局このような意図があったのである」とする田中氏の言説には違和感を感じるのですが、どうでしょうか。
Posted by 齊藤 at 2009年11月23日 00:27
>齊藤さん

官僚機構にしても、、民主党沖縄ビジョンにして、田中氏の着眼点に独自さを感じます。いずれもこちらが薄々気になっているところを、リサーチし分析し整合性を持たせて(いるかのように読める)提示する。それに対しては、こちらも勉強するしかない。それ以上のことはいえない。これが一点。

そのように書かれた田中氏の記事は「読ませる」コンテンツである。「なるほど」と思わせる。その論拠の中心となっている「多極主義者による陰謀説」を除いは。よって田中氏の「陰謀」も含めて読むべきである。この場合の「陰謀」は必ずしも悪い意味でのみいっているのではありません。実際ご本人と会って言葉を交わした経験に基づく多義的な意義を含んでいます。

この記事の前半部分に関していえば、これだけの「常識」を書いてくれたことは、このコンテンツを読む層への影響力を思えば、決して小さくないことだと思います。

「今回は、私の沖縄訪問について書こうと思っていたが、いろいろ調べていくと、私個人の経験談を書く前に、書くべき巨視的なことがたくさんあることに気づいた」とし、経験よりもネット検索による基礎調査を元に書いているようですが、その基本的な態度については、やはり県民大会を目撃し、「囲む会」での見聞も含めた沖縄での取材体験が書かせているように思います。

ということで、やはり問題は後半ですね(笑)。
Posted by 24wacky at 2009年11月23日 13:50
 
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