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2008年06月27日

沖縄アソシエーショニズムへ その4

シンポジウム「マーカラワジーガ?!」へ期待したのは、佐藤優という異物を招いた企画力に対してのものが大きかった。母親が久米島出身という出自もあり、琉球新報へのエッセー連載をはじめ、沖縄へのコミットを始めた佐藤に対して、沖縄では賛否があるようだ。その奈何によらず、彼の発言内容は、これまでの沖縄の言説空間にない風を呼び起こしていることは確かだろう。

ズバリ注目したのは、佐藤と仲里効、松島泰勝との間で繰り広げられるであろう応酬であった。独立、自己決定権、自治などのタームが語られ、議論される過程で、それぞれが抱く国家感が露出されるのではないかと期待した。

沖縄アソシエーショニズムへ その4だがその前に、佐藤が基調講演で何を語ったかをまずは確認しておこう。それによってこのシンポジウムに対する彼の姿勢がある程度分かるだろうから。

佐藤は、冒頭で沖縄独立について長々と触れた。琉球新報連載「ウチナー評論」とほぼ同内容であるが、彼が自らの立場を明確にした上で、誰に向けて、どんな語り口で話を展開しているか、その形式に注目して読んでいただきたい。

沖縄独立の可能性に関して、沖縄の人々が過小評価しています。沖縄独立は可能です、恐らく3年くらいあればできるでしょう。

まず、沖縄独立論を揶揄する人が、「それを居酒屋独立論ではないか、圧倒的に大多数の沖縄県民は沖縄独立なんか考えていない」という議論がよくなされ、これが「常識」として通用している。国家独立、民族独立、ここではつめないでおきます。

まず居酒屋独立論という言い方ですが、全ての独立運動は居酒屋から始まっています。これはヨーロッパをみれば分かります。カフェ、コーヒーハウス、ティーショップ。そこに入るのは誰でも自由です。こういう場所で「おい、おれたちちょっとコケにされているんじゃないか?」「ふざけやがって!」・・・こういう話を飲みながらするうちに、だんだん独立の方向に向かっていくわけです。ですから、居酒屋独立論というものがでてきているということは、独立に向けた現われだということです。

ちなみに、沖縄の人々が居酒屋独立論というのは構わないです。それは若干の自嘲であり、アイロニーだから。ところが、内地の、沖縄独立に関して理解をしようとしない人間が、「居酒屋独立論だ」というのはいけない、それは揶揄だからです。言葉にはコトダマが宿っています。それを発言する人の真意によって、その内容は別々に受け止められます。

さらに、住民の大多数が反対しているから独立はないということはありません。1991年3月に、ソ連全体でソ連邦維持に関しての国民投票をやりました。8割のソ連人がソ連維持をいい、バルト諸国でも過半数が独立に反対です。ところがその年の終わりにソ連は崩壊し、独立共和国ができたじゃないですか。これは過去3回「うちなー評論」という琉球新報の評論にも書きましたが、ルーマニアとまったく同じ状況です。簡単にいうと、独立というのは、県会議員が国家議員になりたいと思う、県会議長が国会議長になりたいと思う、知事が大統領になりたいと思う、商工部長が商工大臣になりたいと思う、そう思うと瞬く間に実現します。住民全体にとって不利になっても実現します。この例は、東欧、ソ連の崩壊の中でもよく見られる現象です。

去年、教科書検定に対する抗議行動として、11万6千人という一つの物語なり神話ができたということがすごく重要なのです。この11万6千という数字は、一つ一つカウントすれば、そこまではいかないなということは、集会の主催者や参加者が一番よく知っているんですね。ところが、そこで起こっていることが何かを理解していない人間が、数字を数えて難をつけている。そんなことになるのなら、断固11万6千人、こう思うのです。当たり前なんです。

そうやって神話を造らせまいとしているのが、沖縄を軽く見ている奴ら、一部の連中なんですね。この雰囲気というのは、独立の雰囲気に明らかに貢献しています。1987年のバルト諸国の様子に、今の沖縄は似ているなと思います。これがそのまま独立?高揚の意識を高めていくのか、あるいは分離独立の道に行くのか、これは誰も分からないということです。ただ、今のような無為無策を中央政府がやっているならば、独立の方向に拍車がかかります。

私の母親は久米島出身、父親は東京の出身です。母親の生地は上江洲になります。沖縄出身の出版関係者、新聞記者は多くいます。沖縄の姓を名乗っているか、内地の姓を名乗っているかでかなりアイデンティティが違いますが、そういった人たちと話すときに私はよくいいます。「沖縄アイデンティティってわれわれは持っていないよね」と。石垣島とか、久米島とか、今帰仁とか、地域個々のアイデンティティは持っているのですが。ただ最近、沖縄アイデンティティを感じている人が多いんじゃないか?それはどういう時か。少女に対する暴行事件が起きる時。それに対して、内地の報道があまりにも冷たい時。あるいは、教科書検定問題において、内地の連中があまりにも理解しないという時。アーネスト・ゲルナーは、民族というのは負の連帯意識から生まれるといっていますが、そのような遠隔地アイデンティティを実感しています。

佐藤は同じ血が流れている沖縄人の側に立ち、沖縄を理解しようとしない「内地の連中」から距離を持つ。同時に独立についての冷静な分析を、沖縄人へ向けてレクチャーする。独立は3年もあれば可能だというが、実際の沖縄独立については論を控えている。佐藤は、沖縄人としての「血」の部分と、国家の暴力を管理する官僚という立場の双方を都合よく出し入れしている。それが彼なりの「インテリジェンス」なのだろう。


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この記事へのコメント
沖縄は独立すべき、出来ると思います。日本は東京一極集中政策で、他の地域は収奪されています。軍事基地や原発等厄介な施設は地方に押し付けています。沖縄はかつてはれっきとした独立国でした。地の利が抜群です。貿易立国としての繁栄が期待できます。冬がなく気候温暖、美しい海、歴史と伝統。理想的なリゾート地です。世界に移民した沖縄人も多く、支持されるでしょう。人口規模は問題ありません。ハワイ、タヒチ等は観光だけでは苦しいようですが、沖縄の立地は最高です。九州独立論も本気ではありませんが、話題になります。
Posted by 九州人 at 2008年07月17日 13:50
独立というとき、ここではまず主権国家として独立するという意味で捉えています。それはそうではない可能性を探るために、まず曖昧な議論を避けるためにそうしています。
Posted by 24wacky24wacky at 2008年07月17日 19:57
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