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2009年06月08日

沖縄アソシエーショニズムへ その16

6月6日(土)沖縄大学土曜教養講座「沖縄の未来を語る 大田昌秀×佐藤優」は、会場を400名以上が埋めた。10分前に着いた時には既に満席状態で、床に座り込んで話を聴くことになった。いったいこの来場者は何を期待して足を運んだのか?大田昌秀の見果てぬ平和論か。佐藤優の狡猾な挑発か。私は、まず佐藤優の企みは何かを知りたいのが第一で、次に「議論」を聴きたかった。しかし果たして「議論」は成立するのかという疑いが当初私にはあった。佐藤は議論巧者であるが、大田がそれに乗るのか、あるいは乗れるのかという疑問が。結論からいうと、その疑問は当った。大田は持論の平和論をひたすら説き、残念ながらdiscussiveではなかった。彼の「講義」中、私はケツの痺れから何度も姿勢を崩し、何度も眠気に誘われることを余儀なくされた。大田のいうことは予想がつくし、ここで紹介するまでもない。以下、佐藤優がなにをいかに語ったか、そしてそれを聴衆がどう受けとったかの推測をしてみる。

沖縄アソシエーショニズムへ その16

佐藤優の講演は、次に挙げる10個の項目がその内容。「大田先生」について / 左翼とはなにか / 右翼とはなにか / 保守と革新について / 沖縄のマスコミは全体主義なのか / 歴史修正主義とそれに過剰に同化している沖縄の有識者について / 沖縄大使に優秀な人材が送られることについて / 帝国主義が近づいていることについて / 沖縄の土建業について / 人材育成における大学の役割について。

「大田先生」について
冒頭で佐藤は久米島の母親が語る大田昌秀の思い出から、彼がいかに優秀なエリートであったか、そしてそれゆえに佐藤が大田をいかに信用しているかを語るところから始めた。自らに沖縄の血が流れていることを知らせ、元県知事にして沖縄革新系エリートである大田に対してへりくだる態度を示すことで、沖縄の聴衆に取り入る。話術の導入部として巧い。時間配分に厳格な佐藤が40分の持ち時間中10分以上をこの話に費やしたところからも、このなんということもない逸話を語ることの重要性を佐藤が重視していたことが分かる。

左翼とはなにか / 右翼とはなにか
次に佐藤は「左翼・右翼という冷戦時代の遺産は払拭しなければならない」とし、フランス革命における定義まで遡る。左翼の特徴は、理性を持ちながら同じ情報を基にきちんとした話をすれば真理に至るというもの。理性で説明できない迷信、神様、王様、貴族などはいらない。自分たちのことは自分たちで守らなければならないという考えなので、国民皆兵である。それに対し、右翼は左翼があって初めて生まれる。右翼は理性を最終的に信用しない。偏見から逃れられないので、理性的に議論をしても結論は複数生まれる。王政や宗教などは今まで続いてきたものだから、理性で割り切れなくても認める。軍事(人殺し)は面倒くさいので専門家に任せる。佐藤はこの座標軸に基づくと自分は右翼であると公言する。

次の佐藤の指摘に注意したい。佐藤は琉球新報連載「ウチナー評論」で仲里効氏の天皇論について書いているが、この座標軸でいえば仲里は保守的・右翼的であるという。また、大田昌秀については、「左翼的な理性を学者としてぎりぎりまで詰めた上で、最後に動かしているものは郷土愛、同胞愛です。これは語義においては右翼的です」と語る。

保守と革新について
保守と革新ということでいえば、保守の側にも革新はあるし、革新の側にも保守はある。

沖縄のマスコミは全体主義なのか
そういう意味でいえば、小池百合子はアラブの新聞みたいだというが、沖縄の新聞は保守的である。理由は2つ。1つ目は地元の政治家のスキャンダルに極めて優しい。2つ目は、双方の夕刊が自発的に廃止になるなど、競争原理にそぐわない面がある。

ただしタイムス・新報(と北海道新聞)はダントツで面白いと佐藤はいう。例えば、田母神氏の沖縄講演会について沖縄の新聞が書かないというのは、一つの編集方針、見識であり、書かないという形で一つのメッセージを出している。それに比べ日本の新聞は朝日から産経まで扱う内容が9割方同じであり、これは世界的にみて珍しい。

沖縄が全体主義の島だという批判に対して、なぜ沖縄のメディア、世論が激しく反発しないのか?反発する意味がない、あるいは反発することによって「沖縄が全体主義の島だ」といっている側に場所を提供することになるから、というのがその理由だとしたらそれは間違っていると佐藤はいう。「沖縄は全体主義の島だといっている人は、日本は全体主義ではないけれども、沖縄だけが全体主義なのだと高みに立っていっている。何を偉そうにいっているのだ」。

歴史修正主義とそれに過剰に同化している沖縄の有識者について
小林よしのりをサポートしている沖縄の有識者について佐藤は訝る。「沖縄大学ということで、宮城能彦先生にぜひ挨拶したかったが、ご都合がよろしくないということで、機会を改めて来たい」。また、沖縄の青年会議所がなぜ右側への舵取りに情熱を感じているのか聴いてみたいという。「沖縄の土着的な歴史・伝統に即したものとは断絶されたなにかがそこにあるのでは」と推す佐藤。つまりここで佐藤は自らの右翼性と彼らが異なるといっている。沖縄のメディアは彼らを相手にしていないようだが、それによってそれらが潜伏して地下で根を生やし、日本の中で通説となってそれがやがて沖縄に返ってくることを危惧すると佐藤はいう。

沖縄大使に優秀な人材が送られることについて
離任した今井氏が外務省と沖縄の間でクッションとなり沖縄のために尽力したことは間違いない。例えば沖縄県議会の陳情団が訪ねた時に彼が会わなかったことの意味。東京から会ってはならないという指示が来ていたはずだが、彼はそれがおかしいと思い、自分たちがしていることはおかしいのだというシグナルを、そこに居るのに会わないという形で現したのだろう。次の樽井氏も優秀な人物であり、そのような人選をするということは、沖縄に対して戦略的な必要性を感じているということに他ならない。

帝国主義が近づいていることについて
これは時代が帝国主義的な展開をしている中で、東京が沖縄を留めるために最大の努力をしなければならないと思っているからだ。

人材育成における大学の役割について
沖縄は様々な可能性を出し切っていない。主張することもしないで黙っていると、民主主義の世の中では少数者は切り捨てられる。集団的エゴイズムを是とするべきだ。そのために東京から系列されている既存の党にこだわらず、目に見えない「沖縄党」をつくるべき。その意味で大田氏に期待している。大田氏の根っこの部分は保守側にも受け入れられる沖縄の土着性、共同性というものがある。

以上が佐藤の講演の概要である。左翼・右翼または保守・革新についての佐藤の定義につき合うわけではないが、私にとって重要な問題がそこには含まれている。次の記事でその点に触れたい。

関連記事:
沖縄アソシエーショニズムへ その4
沖縄アソシエーショニズムへ その5



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この記事へのコメント
こんなに面白い内容だったのですか。
離島でなかったら、聞けに行けたのに残念です。
Posted by son at 2009年06月09日 01:57
>sonさん

青年会議所の傾向について「沖縄の土着的な歴史・伝統に即したものとは断絶されたなにかがそこにあるのでは」という指摘で、Z島の「青年」たちのことが頭をよぎりました。そのへんのことなど、次回お会いした時に話を伺いたいです。

佐藤優を再び読んで、北部であるいは離島で開催したいという発言が主催者からあり、佐藤も応じていました。もともと彼は久米島を一つの拠点としていることもあるので、十分実現の可能性はあるでしょう。

離島でいえば座間味島は「集団自決の島」というイシューで他の島に比べて選ばれやすいということがいえるのではないでしょうか。その際に、それを逆手にとって(利用して)「集団自決の島」だけではない座間味の個性(良い面も悪い面も含め)をアピールするという戦略はアリだと思いますが(現実の問題を考えず無責任にいっています)。
Posted by 24wacky at 2009年06月09日 11:02
訂正:
佐藤優を再び読んで×→佐藤優を再び呼んで○
Posted by 24wacky at 2009年06月09日 20:13
刺激的な挑発をしていますね。確かにその場に居合わせたかった。
相手にしない=議論の俎上に乗せない言説が「マニトウ」のように潜伏するという指摘は興味深いところです。
ところで「大きな全体主義の帝国」において「全体主義の島」を糾弾してみせる小林は、単体でみれば「全体主義」的ではないような印象です。これを帝国の住民たちが掲げるという構図でしょうか。
Posted by 齊藤 at 2009年06月10日 07:24
>齊藤さん

この潜伏は想像以上に浸透しているとみています。いつまでも「基地反対は70%以上」といって済ませていると、足元をすくわれるのではないでしょうか。
Posted by 24wacky at 2009年06月10日 19:24
 
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